第12話

 鈴原零がバイト先から帰宅すると、風呂に入って歯を磨き、スマホゲームを開始した。と言っても、殆どのキャラがレベル上限まで育っているので、再びガチャを引きまくるまでやる事はない。ギルドバトルも明日からだ。


「零君こんばんは。今は何も無くて暇ね。と言っても、他の人達は明日のギルドバトルまでにレベル上げが終わらなくて頑張ってるようだけれど」


「麗さんいや、麗ちゃんこんばんは。俺も暇ですね。昨日でレベル上げが終わったんで」


「零君の到達ステージなら経験値沢山でレベル上げが早いものね。どうやってそこまで進んだの?」


「雪子の力ですね。レベル3000で冷気スタック増加のたびに受けるダメージ減少がついたので最高で70%まで減少できます。それに加えてフィガロも一番強い敵を優先して倒すので雪子を落とせる敵はいなくなるので雪子無双を止める者はいなくなって楽勝でした」


「その雪子の姿が昨日から見えないのだけれど? ギルドバトルで使わない約束はしたけれど、まさか手放したの?」


「いえ、サブアカウントに移動させました。始めから強いキャラがいると楽しいものですね。経験値は期待出来ませんが」


「サブアカウントに? 残念ね。せっかくレベル3000のキャラなのに。味方さえ一緒に攻撃しなければね。どうせならフィガロが沢山出ればよかったね。レベルが上がれば脆い耐久力も少しは上がるし。防御スキルも覚えるかも知れない。攻撃に全振りだろうという噂もあるけれど」


「俺は雪子で後悔は無いですよ。サブアカウントのステージを進めて雪子をレベル8000まで育てます」


「ちょっと待ってサブアカウントに課金する事になるわよ。サブとメインどっちが大切なの。ギルドをクビになるわよ。雪子は諦めなさい」


「確かにそうですね。サブに課金するのは確かに危険だ。課金額が2倍になる。もう少し考えます」


「思い止まってくれて良かったわ。そろそろ寝るね。おやすみなさい」


「零さんおやすみなさい。俺も寝ます」


 麗奈との通話を終えて鈴原零はベッドに寝転んだ。帰ってきた時は楽しそうだったのに、今は退屈そうだ。


「何かつまらねえな。雪子がいないメインアカウントがこんなにも空虚なものになるなんて。どうしたものか。あ、そうだ。宝くじで強化された運気を見る能力を試すの忘れてた。数字が光って見えれば同じ番号を複数当てて……キャリーオーバーが狙い目……お、3回もキャリーオーバーしてる。当たりが出る前に買わないと。これでサブに課金出来るぞ!」


 零は独り言を呟きながら黄色いオーラを高める。まだ足りないようだ。更にオーラを高める。霊力が爆発しそうだ。部屋が揺れそうだ。


「見えた! が、これだけ力を使ってやっとか。億万長者は遠いな。だが、まだまだ! うおお! 雪子ー!!」


 物凄い気合いで2等賞までの数字が見えた。これで彼の預金が更に増えるだろう。もう、彼の幸運を疑わないわしがいた。

 力を使い果たして眠る彼の寝顔は穏やかだった。明日はゴブリン討伐。生きるか死ぬかの戦いが待っている。果たして彼はこの平和な地球と異世界の切り替えが出来るのだろうか。わし、すっごく心配。

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