第95話 閑話休題!



あのスカウト三昧の1週間が終わり、新チームとしてのスタートを切ることになった白星高校。


2年生11人。

1年生16人。


計27人で20人のベンチの枠を争う。

3分の1がレギュラーになれるし、約3分の1がベンチから外れることにもなる。



ここで白星高校のおさらいしておくが、2年生のポジション別人数は結構偏っている。


投手2人、捕手1人、一塁0人、二塁1人、サード1人、ショート1人、外野6人。


ポジション的には外野が多いが外野でも内野ができる人もいるので、あくまでもメインが外野という人が多い。


例を出すと遠山苺先輩はレフトとサブポジションでファーストを守れるし、剣崎香奈先輩はライトとサード。



瀧上先輩も内野全て守れるので、守備で専属と言うよりもサブポジションが豊富な選手が多い。


2年生はどんな選手が多いかと言うと、好打者が多く長打というよりもヒットを重ねていくタイプが多く見られる。


走塁、盗塁面ではあんまり期待できる選手が多くない。


足が早い選手が大湊キャプテンと少し差があって瀧上先輩が早いかなと言うくらいで、他の人はあんまり足には期待できそうにない。



守備面はさっきも言った通りにサブポジションを守れる選手が多く、守備範囲が馬鹿みたいに広いという選手が多い訳ではなく、エラーしない確実な守備ができる選手が多いので守備で崩れる心配はあんまり無さそうだ。



1年生はというと、個性的な選手が多いからバランスを取れというのも難しい話である。


平均化を目指して練習してもいいが、それだと甲子園には出れる可能性はあるかもしれないが多分勝ち上がれないだろう。


2.3人はありとあらゆる方向に突き抜けた選手がいると、相手もその対策を練らざるおえなくなるし、そこばかりに目を向けると他の選手が牙を剥く位のチームの構成が理想になるかもしれない。




1年生は俺が思ったよりも足の使える選手が多いことに気がついた。


かのんはあまりにも断トツで、その次に梨花だが投手で走塁も盗塁もあんまり上手ではない為候補に入れるか微妙だ。

凛も隠れているが結構走塁盗塁センスは感じられるし、一般の元陸上部の花田さんも足には使えそうだ。




逆に弱点も結構露呈しかけてるところもある。


毎回言ってるが、投手力が低い。


七瀬が投手に専念して梨花とダブルエースなら悪くは無いが、2人の投手のタイプ似ている為継投していく意味があんまりない。


これは俺が柳生の姉が来ると思っていて投手をスカウトしなさすぎたのも悪いといえば悪い。



美咲もバランスで見れば悪くない投手だし、上手く鍛えれば安定感のあるどちらかというとプロ向きの投手になれるかもしれない。


一発勝負のときは安定して3失点くらいにまとめられる投手よりも、相手を圧倒する投手の方が必要な時も多い。



夏実は逆にワンポイントとかだと結構悪くないかもしれない。




俺が個人的に1番問題だと思っているのが、守備だ。

桔梗だけはファーストで相当高いレペルの守備を誇っているが、センターラインがまだまだ決まっていないし、ちょっと不安が残る。


セカンドのかのんは守備範囲も広くて上手いが、案外エラーが多い。

しかも普通の平凡なゴロをあっさりエラーしたりすることもあるが、それを考慮しても上手いと思う。



ショートとセンターが守備だけを考えると薄い。

美咲と月成がショートを守れるが、美咲は本職ではないし月成は思ったよりも打撃型の選手だったので、これから期待だ。


センターは現状凛しかいないのが中々きつい。


変わりになれそうな選手が美咲、夏実くらいしか居らず外野守備は相当弱点になりうると思う。

氷はほぼレフト固定だし、氷の守備はまぁそこそこ見てられないレペルでもあるし、外野守備の強化は絶対に改善しないといけない。




打撃は…。


かのん、桔梗、氷の3人は言わずもがないいバッターだし、そこに月成も割り込んでいい打者としてくい込んできている。

4人いい打者がいれば打線としてはかなり期待できるだろう。



思ったよりも打てないのが、柳生と七瀬と凛。





「はぁ…。まだまだ課題だらけだな。これから一応2年あるからそれだけの時間を使えばみんな立派な選手になれるかな。」




俺は毎日の日課の野球日誌を閉じた。

選手の成長をまとめたこの日誌は結構毎日楽しく書いてある。


この特別なノートには各個人のページがあってそこに色んな気づいたこととかをまとめてある。




これを誰かに見せることも無いし、もしかしたら逆にそういうことを書かせるかもしれない。

それを見て選手との気持ちの相違や価値観の違いを少しでも埋められるようにできる架け橋になるかも。




「龍くん。お疲れ様。ちょっと今いい?」




「監督、お疲れ様です。全然問題ないですよ?どうかしましたか?」




「それがね、8月に長崎で短期合宿をやるんだけど、それは誰かから聞いた?うちって長崎に姉妹校があるんだよね。昨年は福岡で今年は長崎の合宿所でやるんだけど、龍くんはくる?」




そんなのがあるのか。


まぁ今は7月入ったばかりだから1ヶ月後に合宿か。

俺は合宿に行ってもいいが、姉妹校ってことは向こうも女子校か元女子校だろうから女の子まみれになるのか…。


向こうが共学ならいいんだけど、女子校だとまた俺の事を向こうが受け入れることから始めるのはかなりご勘弁願いたい。




「うーん。合宿ってどれくらいですか?」




「4泊5日だね。合同練習2日と練習試合を2日の予定にしてるよ。かなりハードな練習にしようと思ってるからそれに参加してくれると助かるんだけどどうかな?」




「まぁ監督がそういうならいいですけど。」




少し気が進まないが、とりあえずOKしておいた。

コーチをしてくれって言ったら断ることは出来ないけど、合宿というのは2週間とかある程度長めの時間で他のチームとぶっ続けでひとつの事をやるのがいいと俺は思うが。





「そっかそっか!よかった。向こうの監督と龍くんに会いたいみたいだし、ちょっとやってもらいたいこともあったからね。」




俺は最後のちょっとやってもらいたい事のために連れて行かれるというのが分かった。

なにか俺じゃないとダメなことがあるのだろうか?




「今日も指導よろしくね。みんな久しぶりの練習でやる気満々な子もいるし、少しやる気のない子もいるだろうからいいテンションを保てるようにしてあげてね。」




「わかりました。けどそこらへんのことは監督にある程度お任せしてたいんですが。」




俺はたまにはモチベーションを上げたり保ったりするのを手伝ってもいいが、それは選手たちの気持ち次第なところもあるし、同世代の俺が出来ることは局所的で中々役に立てないと思ったのだ。




「今日は結構はっきりと言うね。まぁ気持ちのコントロールは高校生じゃ大変だろうし、私に任せておいて。どうしても龍くんしか無理そうな時はお願いするね。」




俺はこの後今週の練習内容とかを話して、俺がこうした方がいいとかの意見を取り入れてもらった。




はっきり言って先週選手たちは休みを貰っていたのに、俺は休みがないのはどうにかならないかと内心思っていた。




「監督!ちょっと俺も休みが欲しいですけど、どうにかならないですか?」




「はは。言ってくれるのを待ってたよ。えっとね、木曜日から日曜日まで休んでいいよ。土日は練習試合入れたからたまにはゆっくりしてね。」




なぜいまさっき沢山話したのにそれを教えてくれないのか…。

まぁ、休みを貰えるなら別になんでも良かったので内心とても喜んだ。




「ありがとうございます!ゆっくりしたり遊んだりしてきます!」




休みを勝ち取ることが出来たが、なにも予定もないしデートする訳でもないがやっぱり休みというのは嬉しい。




こうして俺は木曜日からのことを考えて今日の練習をウキウキで指導した。




だが、俺はこの4日間休めたけど、また色んなことに巻き込まれてしまうのであった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る