第51話 自己紹介②!



「西梨花。堅苦しい挨拶なんてワシには出来んわ。生まれも育ちも広島で口が悪ぃのは目瞑ってくれると助かるわ。ポジションはピッチャー。とりあえず3年間よろしくな。」




思ったよりは普通だったが、慣れてない女の子は怖がってるんじゃないだろうか?



拍手も一応みんなしていたが、ちょっとだけ恐縮している感じだった。

急に受け入れろというのも難しい話だ。



彼女にはちょっとずつ仲間と打ち解けれるように慣れればいいなと思った。




西梨花(にしりか)。


特待生Aランク。



身長推定168cm

推定体重60kg前後

右投右打の投手。一応外野手が出来るらしい。



中学生では相当速い121キロのストレートと落差があり球速も出ているスプリットの2つだけで相手を抑え込んでいる。


試合を見た事ないのがちょっと気がかりだが、性格は言わずもがな超強気でちょっとやそっとの事じゃ心が折れてピッチングが崩れるとは考えにくいと思う。



精神力の強いピッチャーは信頼できる大きな要因の1つである。



コントロールは最低限あるが、これから高校に入ってストレートで勝負するなら更にコントロールを磨いてもらおうと思っている。


弱点は、ピッチング以外のことが大雑把で練習すればいい物持っているのだろうが今のところ打撃、守備辺りは課題にはなって来るだろう。


身体能力の高さはチームで1番高いかもしれない。



Sランクの桔梗を中心として考えるとこの世代は桔梗世代とこれから呼ぶことにする。



桔梗世代の現時点でNo2の実力で、桔梗世代では桔梗か西さんしかSランク特待は考えられなかった。


2人がいなかった場合はS特待は該当なしにしようと思っていた。



個人的に俺の姉の面影がチラホラとプレーに見える時があった。


これまでちゃんと試合に出ることも出来ずに干されていて、チームメイトとは会話もほとんどせずに打ち解けられなかった。


そういう野球人としての普通を手に入れれた時に、野球の本当の楽しさに触れられたらまだ見え隠れしている怪物の片鱗が見えるんじゃないかと期待している。



それもこれも彼女次第だ。

だが、それの受け入れるのは最終的にはチームメイト達になる。



俺の姉に憧れて野球をやってきて、中学生相手なら圧倒する実力を持って相手をねじ伏せるのが野球の醍醐味だと思っているようだが、本当の野球の面白さというのは違うところにあるのに気づけるかを見守ってあげて、時には手助けをしてあげようと思っていた。






A特待2人目はいままであまりにも静かだった彼女だ。






「やっほー!四条かのんだよ!ポジションはセカンド!よろしくぅ!」




かのちゃんにしてはあっさりな自己紹介と思って聞いていたが、ガサゴソと何かを取り出したと思えば一番最初に出た国語のテストの問題用紙を取り出した。




「ねぇ!みてみて!シャーペンでモナ・リザ描いてみたけどよく出来てない?」




さっきからやたら静かで、テスト中にもずっと何かしてると思ったらまさかのモナ・リザを描いてるとは思わなかった。



予想の斜め上すぎる出来事にみんな唖然としていて、反応してあげることが出来なかったが、西さんだけは腹を抱えて爆笑していた。




問題用紙のモナ・リザをそのままバシッと黒板に貼り付けると満足気に自分の席に戻って行った。




四条(しじょう)かのん。



特待生Aランク


161cm53kg (本人申告)

右投左打

ポジションはセカンド。

一応ショートとサードも出来る。



姉も天真爛漫だと思っていたが、かのちゃんは天真爛漫という言葉の元になったような人物像だ。


だが、相手の精神を逆撫でる言葉遣いをどこで習った知らないが相手を精神的にゆさぶりをかけるのが得意という1面もある。



弱点でもあり長所でもある個人至上主義。


チームの勝ち負けよりも自分が相手の勝負に勝てるかの方が重要だと思っている点。



いざという時にサインを出しても拒否される可能性もあるだろうし、負けそうな時は一番最初に諦めるかもしれない。


だったら変えろと言われるかもしれないが、彼女に代わる選手を連れてこいと言いたくもなる。



選手としての特徴はバランスいい打撃能力と、かなり広い守備範囲、そして何よりもその中学生離れした俊足。



選手としてそこまで弱点を感じないが、それは実力を出せる状況での話だ。



相手投手に球数を投げさせようという気がなくてツーストライクに追い込まれると急に三振が増える。



試合が優勢になると集中力が切れるのかエラーが増えてきて、無謀な走塁も多くなる。

盗塁もかなりめちゃめちゃ無謀なタイミングで勝手に走るが失敗したところを見たことがない。



総合能力でいえば桔梗並だと思うが、あまりにも波が激しく、ダメな時といい時の成績を総合すると桔梗には及ばないという結果になってしまう。



本人にも手を抜いてるかどうか聞いたことがあるが、手を抜いてるという自覚がない以上これは付き合っていくしかないだろう。






A特待3人目はあんまり目立たない感じの女の子だった。







「時任氷です。よろしくお願いします。…ぺこり。」




簡潔すぎる自己紹介の後に頭をぺこりして席に戻ろうとしたが、監督に流石に捕まってしまった。




「外野手だと思います。下手なので外野手かどうかも分からないです。足も遅いです。肩もそんなに強くないです。けど、ヒット打つのだけは誰よりも上手いと思います。以上です。…ぺこり。」




自分の長所、弱点を簡潔に答えてさっきと同じように頭をぺこり。

ちょっと独特なのを察したのか興味を持ってる人も居れば、あんまり興味無さそうにしてる人もいる。




時任氷(ときとうこおり)。


特待生Aランク。


推定身長153cm

推定体重53kg前後

右投げ両打ち。

ポジションは外野手で主にはレフトを守っていた。


身長が小柄で少しだけふくよかな感じの体型。

太ってるとまではいかないけど、少しだけまるいなという感じの印象だ。


ぱっと見た感じだと冬のトレーニングをしてきたかどうかは分からない。



まず弱点からだが、

時任さんは自分で説明した通り、桔梗世代の中でいえばかなり遅い方だ。


いつも下手代表みたいに紹介して申し訳ない江波さんと同じくらいのレベルで、足が遅い分結構守備は酷いことになると思う。


とりあえず及第点の最底辺くらいまではとりあえず守備を鍛えないといけないだろう。



なぜA特待かというと圧倒的なバットコントロールにある。


体格が小さい為、あまりパワーがそこまでないがスイング自体は結構鋭いスイングをする。


体の小ささとパワー不足を補うために体格に全然合わないバットを使っている。


身長と体重からみて81〜82cmの軽めのバットのアベレージ型のカウンターバランスだと思われてるが、全く逆で85cmのやや重めのバットの中〜長距離ヒッターが使うトップバランスを使っている。



重心が先にあるトップバランスでも一切フォームが崩れず、逆にヘッドの力を最大限に生かす天才的な技術を使って少ない力で最大の成果を得る。



それを支えるのが動体視力の良さ。


公式戦で見逃し三振はあるが、空振り三振は1つもない。

多分見逃し三振も僅かにボール球だったのだろう。



動体視力測定などはしていないが、俺と同じレベルの動体視力があるのではないかと思っている。



1年からスタメンは厳しいと思うが、ベンチ入りはほぼ100%彼女なら入ってくると思っていた。

代打で出場は間違いなく出来ると思う。








そして、最後の特待生Aランクは。






「七瀬皐月です。中学では主にピッチャーをやっていました。高校からはどうしても諦められなかったキャッチャーとして1から頑張ろうと思っています。3年間よろしくお願いします。」




七瀬さんが最後の最後に特待として白星に特待生として来ることを決めたらしい。

10月半ばに雪山さんをスカウトしてその後に決まったということは結構ギリギリに決めてきたのだろう。




あんまり気にしたこと無かったが、かなり透き通るような声をしているんだなと思った。

そんなに声を張り上げてる感じもないのに、部屋中に響くような感覚?


かなり簡潔な自己紹介だったが、元チームメイトの江波さんが誰よりも大きくパチパチと拍手していた。



喧嘩していた桔梗も普通に拍手してたのでそれはよかった。

無視したりするようじゃ先が思いやられる。





七瀬皐月(ななせさつき)。



特待生Aランク。


推定身長164cm

推定体重57kg

右投右打

今現在は主にピッチャー。将来的にはキャッチャーを志望している。



投手としてやる気があるのなら全国でもかなりいい投手になれる素質は十分とある。



彼女の肩の強さは誰もが羨む天賦の才だと俺は思っている。


投げ方がとてもシンプルで力感も感じないあの無機質と言われてもいいようなフォームで、そんなに本気で投手の練習せずに120キロ近い球を投げられるのはそう考えるのが妥当だ。



ただ、本人にはそのやる気がなくキャッチャーを志望している以上みっちりと鍛えないといけない。



投手をずっとやっていたおかげか下半身がかなりしっかりとしていて、今後キャッチャーとしても打者としてもその下半身の強さは本人を助けてくれるだろう。



なぜA特待の最後の一人にしたかというと、キャッチャーだけで見れば柳生さんには勝てない。

ピッチャーの素質を合わせたらA特待は妥当だと思っていた。



A特待の条件として俺がキャッチャーとして1人前と認めて柳生さんとポジション争いをするまでは、一応投手のメニューも簡単にこなしてもらい投手として登板してもらうというものだ。



今のところ打撃も中の下、走塁面でも中の下、キャッチャーとしては下の上くらいで肩の強さだけでは簡単にレギュラーを掴めるとは思っていない。



1番好印象なのは才能のある投手を捨ててまでキャッチャーというポジションに拘っている点は評価できる。

好きこそ物の上手なれというように高校からは好きなだけキャッチャーが出来るのだから頑張って欲しいと思っている。



とりあえずはキャッチャーとして育てつつも、これまであまり練習してこなかったであろう野手としての基本も叩き込まなければならない。


それを会得するまでは投手として中継ぎで試合に出て頑張ってもらおう。




ここまでの4人が特待Aランクの選手たちだ。

次からは特待Bの選手たちが自己紹介をしてくれるだろう。




特待Bで1番実力のある人から順番に挨拶をしてもらうことにした。


この自己紹介順はいまの実力順というのをわかる人はいるのだろうか?



その意図にわかる人は自分の立ち位置を把握して、もっと頑張って上に上がろうだとか、上の人は下の人から追いつかれないように気を引き締めることが出来るが流石に気づけても1人くらいしかいないだろう。




そんなちょっとした意図のある自己紹介の次の人は一体誰がトップバッターなのだろうか。





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