第49話 ラスト!



俺はあの後2回練習を見に行った。



練習が終わった後にあの3人のバッティングフォームなど簡単に出来るコーチをしてあげた。




結果、雪山沙依さんをスカウトすることにした。



打撃能力



長打力 50〜55

バットコントロール 20

選球眼 10

直球対応能力 50

変化球対応能力 0

バント技術 0

打撃フォーム

スタンダード?

というよりも直すところが多すぎて今のところ打撃フォームどころの話しではない。


守備能力


守備範囲 70〜75

打球反応 15〜20

肩の強さ 35〜40

送球コントロール 10

捕球から投げるまでの速さ 20

バント処理 10

守備判断能力 10

積極的にカバーをしているか 10



走塁能力


足の速さ 65〜70

トップスピードまでの時間 90

盗塁能力 10

ベースランニング 65〜70

走塁判断能力 5

打ってから走るまでの早さ 80

スライディング 70




点数を付けてみて思ったが、とてつもないくらい野球が下手なのがよくわかる。


というよりも全然まだ野球を理解していないというか、実戦経験がないと思う。



それも本人と話をしてみれば分かるだろう。

ポジション的に1番話すであろう月成さんを仲介人として呼んで来てもらうことにした。




「おいッス!吾輩は雪山沙依でございやんす!」




「月成さん、ごめんけどやっぱり2人で練習戻っていいよ。」



「ですよね。連れて帰ります!」




なんか変な奴が出てきたので、すぐに連れて帰るようにお願いした。





「うそッス!ちょっとでも印象に残ろうと気張ったらこのざまッス!」




「なるほど。まぁ1回だけはチャンスをあげよう。月成さんからはある程度話し聞いて来た?」




「めちゃめちゃ聞いてきたッス!白星高校のスカウト兼コーチをしてるナイスガイがいるって!」




俺は一瞬チラッと月成さんを見たが、すぐにブンブンと首を横に振った。


あんまり気にしすぎると話が進まなそうだったので、多少のことは気にしないようにした。




「こんなこと言うのどうかと思うけど、雪山さんって素人だよね?いつから野球を始めたのかとかここに参加してる理由を聞いてみたいんだけど。」




「了解ッス!ウチは元々スポーツしてなかったんッスけど、運動神経だけは昔からよくて今年の春くらいにクラスメイトに人数が足りない軟式のチームに誘われたんッス。それで野球にハマっちゃって高校で頑張ってみようと思ったんッス!」




なるほど。

今年からならまだ半年しか野球をやっていないが、確かに身体能力だけは中学3年にしてはかなり高水準みたいだ。



投げ方もめちゃめちゃだけど、あれくらい投げられるなら練習すればもっとしっかり投げられるだろう。




「すごい納得できた。身体能力だけで何となくプレーして周りに比べてマシにプレー出来ることがびっくりだよ。」




俺は素直に思った。

こういうお馬鹿はちゃんと育てれば結構役に立つかもしれないと内心思っていたが、物わかりがいいとは思えなかった。




純粋に3年間で役に立つレベルになるかは怪しいが、物になったらレギュラーになれるかもしれない。



それほど身体能力の高さというのは偉大なのだ。

鍛えてなくて元々持っている才能は鍛えることで普通の人では届かないレベルまでになる。



だからといって野球が上手くなるとはイコールでは無いのだが。



走塁や肩の強さなどはトップクラスになれてもバットにボールが当たらない、投手でストライクが入らないとか野球選手として欠陥のある選手になる可能性は大いにある。




「レギュラーを取れるかは雪山さん次第だけど、俺も野球については教えるから白星高校に来てみる?」




「えっ!ウチなんかがいいんッスか!?」




「多分というか絶対2年間はレギュラーにはなれないと思うけど、その間に地味な練習でもなんでもやるんだったら可能性は0じゃないと思う。どう?それでも白星に来てみる?」




「行くッス!家族に相談はしなきゃダメッスけど、必要とされるなら行きたいッス!」




彼女は即答だった。

どこの高校に行っても野球は出来るだろうが、こうやって誘われたりするのが好きなのだろう。



野球始めた理由も誘われたからって言っていたし、雰囲気から感じる突き抜けた前向きさならちょっとやそっとじゃ諦めないだろう。





「分かった。それなら天見監督に連絡しておくから、中学校とか電話番号とか教えて。」




「了解ッス!いきなりだったけど、高校でも頑張るんでよろしくッス!!!」




「OK!こちらこそ高校でみっちりと鍛えてあげるから楽しみにしててね。」




「ほどほどでよろしくッス!」




まさかこの練習場で素人をスカウトするとは思わなかったが、俺自身が納得していない訳では無い。


物になるかどうかは彼女次第でもあり、俺次第でもある。



そう考えると高校に入ったらやるべき事が沢山ある。

それを実行出来るかは分からないが、とりあえず1つずつ課題をクリアしていくしかない。




俺の中学校でのスカウト活動はこれが最後になった。




全部で11人。未定が1人いるが一般生徒の入部も合わせると15人前後くらいにはなるだろうか?




夏から入学する春までに各自は自分との戦いになる。


ある程度きついトレーニングメニューを全員に渡したが、それをどれくらいこなしてくるかはわからない。


きつい練習は1人だとどうしても手を抜きたくなるが、それを出来ないと俺が高校になって教えてもどこかで妥協してしまうだろう。





その結果は入学したら俺の作った項目のテストを受けてもらって、それによってどれくらい鍛えてきたかが分かるはずだ。



それまでに俺も色んな練習の準備もそうだが、自分自身も怠ける訳にはいかないし、どの選手たちよりも更に鍛え直してくることを固く心に誓った。






1月21日。



明日、専願入試の為に白星高校に行くことになっていた。



スカウトした選手たち全員が初めて一同に会する。



俺がまだ話したことの無い柳生亜衣、時任氷とも初めて話すことになる。




俺は早くもどんなチームになるのか楽しみにしていた。




色々と楽しい想像が膨らんできたが、寝坊しないようにいつもよりかなり早く就寝することにした。





「明日みんなに会えるの楽しみだな。」




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