第101話珈琲の匂い

「北雄かい?ちゃんとご飯食べてる?」


開口一番にお袋は心配そうに言う。


「なんか親父が落ち込んでたよ」


「あたしね、もうお父さんと別れようと思ってる」


嫌な予感は的中した。


「家にはもう絶対帰って来ないつもり?」


「…………」


お袋は数秒黙って溜め息をつく。


「もう家族として終わってるのよ」


お互い別の相手がいて仮面夫婦を演じてたのは重々承知してるが……。


まだ微かな希望を持っていた。


しかしもうお互い限界なんだろう……多分。


「あんた、お父さんとやっていける?」


「お袋今何処にいるの?」


「彼のとこよ」


「その人と一緒になるの?」


「まだ分からない」


「親父とはやり直せないんでしょ?」


「ごめんね」


そう言ってお袋は電話を切った。


お袋の相手があの元生徒会長の西園寺霧風とはこの時の北雄に知る由もなかった。





五宮フレイユは久々に上等高校に登校した。


生徒会長の東郷院龍平を探すが、見つからない。


どうも生徒会の金が不正支出されてるようので相談したかったのだ。


屋上に行くとにずっと不登校だった木野崎八重子が1人ぽつんと座ってる。


「木野崎さん、久しぶり……」


木野崎はびくっと体が反応する。


よれよれのコートに手をかけ、そそくさとフレイユを無視して屋上の扉をガタンと閉め階下へ降りていく。


フレイユは少し眉を細める。


屋上は肌寒い。


早く春が来ないかなとフレイユは屋上から街並を見渡す。


2023(R3)1/21(土)














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る