第49話ビューティフル・ゴールデン・スランバー
台風の影響で雨が止まない。
放課後に神奈子からメールが来て久々に会おうと言う。
立川のカフェ”セロン“で待ち合わせる。
「なんか少し痩せたんじゃないか?」
神奈子は元々細っそりしてるが、更に細くなってる。
「そうかな、勉強痩せかも……」
何気なく会話してるが、倦怠感が否めない。
女の勘の鋭さは言うまでもないが、大先生のことをどこまで隠せるか。
「北雄こそ、勉強してるの?」
「まあ、今迄にないくらいしてるよ」
「50位以内行けそう?」
「多分無理だと思う。70位くらいなら可能かな?それも周りの連中が手を抜いてくれればだけど」
「3年は大変よ。受験まであと4ヶ月。追い込みね」
「イケそうなの?」
「そればっかりは試験を受けてみないと分からないわね」
神奈子はホットコーヒーをすする。
俺も無事進級すれば1年半で高校卒業出来るが、それから先がカオスなんだよな。
神奈子と散開して立川駅前をブラブラしてる。
カードショップ”ミント“で物色してる。
3千円小遣いの前借りが出来た。
残金合わせて4千ちょい。
大事に使わねば。
IKEAを越えてららぽーとまで歩く。
時間は午後6時。平日のせいか人もまばらだ。
ふとビートルズの「ゴールデンスランバー」の歌詞が頭をよぎる。
I phone で聴き直す。
何度聴いても孤高の輝きのある曲だ。
有り体な日常の中でも音楽はある奇跡を呼び起こす。
2021(R3)9/18(土)
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