第37話夜更けのバラード

午後8時前に帰宅すると親父の部屋からドスンドスンとドラムの重い音が響いてる。


プリンスの「1999」を聴いてるんだなとピンときた。


そういやこないだファンクサウンドに飢えてんだよと言っていた。


プリンスの「1999」は名盤だ。


このアルバムのファンクなサウンドは確かにストレス解消になる。


台所の洗い場には洗い物の皿が溜まってる。


台所のCDラジカセにはサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」のCD が入ってる。


お袋の好きなアルバムだ。


飲んべのわりに情緒的な音楽が好きなようだ。


飲んべだからこそ情緒的なサウンドを求めてるとも言える。


プレイボタンを押して皿を洗い始める。


3曲目の「セシリア」が始まる頃には皿を洗い終わる。


お袋はスナックで働いていたが、今は当然仕事は無く新たに職を探してるようだ。


今日はどこに出かけてるのやら。浮気でもしてるのかな。


部屋に入って散らかり気味なので片付け始める。


汚いものを綺麗にすると徳になるという。ホントかね?


自己で所持するCDは50枚に満たない。


聴きたいものは大概親父が持ってるのでいちいちCDを買う必要はない。


親父の部屋からはみ出したダンボール5個分のCD。一箱150枚として約750枚あることになる。


最近はこの親父のコレクションから選んで聴くことが多い。


積み上がってる上から2番目のダンボールを開けるとエルビス・プレスリーのCDが4、5枚目立ってる。


廉価盤のベストを出してCDコンポで流す。


部屋を掃除する時はスラッシュ・メタルの”メタリカ“を流すことが多い。


あの煽られるハードなサウンドが掃除を捗らせる。


今日”メタリカ“という気分じゃない。エルビスのようなオールディーズが聴きたい。


モータウンでもいいんだけど。





夜中12時頃腹が減ってくる。


台所に行くとまたお袋が酒を飲んでる。


天窓からカップラーメンを出すとお袋は「不良少年」と一言。


「俺が不良少年ならお袋は不良主婦だな」


お袋は「ふん」と唸って酒を煽る。


酒に傾くお袋を見てるとやりきれない。


と同時に酒に溺れる人生は送りたくないなと漠然と思う。


2021(R3)8/31(火)




















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