第144話 日焼け止め
「マジだよ。私たち、肌白いから日焼け止め塗っておかないと後で大変なことになるから」
ゆきなちゃんは、さもありなんと言わんばかりに
「いや、確かにゆきなちゃんと西園寺は肌が白いのは分かるけど、俺が塗る意味あるのか…」
レジャーシートの端っこに佇んでいる俺を興味津々な目で見上げているゆきな。それと引き換えに、西園寺はあわあわしながら指を組んでいる。おかげで豊満な二つの白い果実を揺れ動いている。
これは目の毒だ。かといって、西園寺刹那を一方的に無視したら、きっとぶんむくれて怒り出すんだろう。これってどっちに転んでもバッドエンドしかないクソゲー並みに酷いと思いますよ?
「ゆ、ゆきなが私に日焼け止め塗ってくれればいいでしょ?」
「へえ?私、日焼け止めのあのベタベタした感触いやなの!」
「お願いだからゆきなちゃんが塗って!」
西園寺刹那は切羽詰まった顔で
「そ、そうだよ。ここはゆきなちゃんの出番だ」
冷や汗をダラダラ流しながら
「あん!ゆ、ゆきな!こ、こら!く、くすぐた、はあん!」
なんちゅう光景見せつけてんだこの子は。
ゆきなちゃんは自分の姉の体の弱点は全部知っていると言わんばかりの表情で、日焼け止めを塗っていく。途中、チラチラと俺に視線を送るが、視線を逸らして知らないふりをすることにした。
西園寺刹那が奇声をあげるのをものともせず、ゆきなちゃんは任務を無事に遂行した。
「はい!終了」
ゆきなちゃんは何食わぬ顔でそう告げると、上気した顔の西園寺刹那が息切れしながら口を開く。
「ゆきなちゃん…手つきに悪意を感じるわ…」
「そう?じゃ、次からはお兄ちゃんに頼めば?」
「ゆきな…」
妹を恨み顔で睨む西園寺刹那だが、当のゆきなちゃんは微動だにしない。そしてゆきなちゃんは、俺に顔を向けて口を開く。
「お兄ちゃん!私に日焼け止め塗って!」
「え?俺が?ここって、普通、姉が塗ってくれるパターンじゃないのか?」
「ほら、お姉ちゃんは今冷静な判断ができる状態ではないから」
ゆきなちゃんはそう言って、自分の姉を指差した。西園寺刹那は頬を思いっきり膨らませている。こりゃ、俺が塗っといた方が良さそうだな。
「そ、そんじゃ、塗ってあげる」
「うん!お願い!」
俺はゆきなちゃんの隣に座って、渡された日焼け止めを塗り始める。西園寺刹那は不服そうな顔で俺たちを見ているが、スルーしとこ。めっちゃ怖い視線を飛ばしているけど、スルーだ。ていうか、なんであんなに怒ってるの?俺が妹にボディタッチしてるのが気に食わないとか?だとしたら、普通、俺が塗る前に止めに入るはず。深いこと考えずに、塗っとこ塗っとこ。
ゆきなちゃんは気持ちよさそうに「ほぇー」とか「ふぇー」とか言いながら目を閉じて体の力を抜いて俺に体を預ける。
おかげですぐに日焼け止めを塗る作業が終わった。
ちなみに、ゆきなちゃんは俺に日焼け止めを塗ってくれた。西園寺刹那はずっと機嫌悪そうにしていたけど。
とまれかくまれ、二人の姉妹はさも楽しげに水遊びをしている。ていうか、西園寺刹那って切り替え早いね。
側から見ても、この姉妹は実に目立つ。故に、
「なんなのあの姉妹?」
「めっちゃ綺麗だけど!」
「姉の方はもしかしたら女優とかタレント?」
皆んなが美辞麗句を並べている。まあ、当然そうなるよね?俺はあの二人の遊ぶ姿をボーと眺めながら、作りかけのプログラムの構造でも考えようかと思っていると、突然男二人が西園寺姉妹に近づいていく姿が見えた。
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