第137話 藤本悠太は西園寺姉妹を認める
土曜日の朝
着替えの服は問題なし。他の荷物も効率を重視したラインナップとなっている。
グループチャットで西園寺姉妹と別荘についての話はたくさんした。BBQをするための道具などはほとんど揃っているので、必要なのは食材くらいとのこと。
その食材も現地で調達することで話はとっくについている。
やることないね。
俺は静まりかえる部屋を見回しながらありし日に想いを馳せてみる。
いつもこのテーブルで3人して美味しいご飯を食べて、授業をした。西園寺刹那はノートパソコンをたたたっと叩きながら、俺とゆきなちゃんを監視していた。今となっては、それが果たして実際あったことなのかも
昭和時代に建てられたこの古臭いマンションに降り立った二人の美少女。片方は子役タレントと言っても全く違和感がないほど可愛いゆきなちゃん。そして、もう片方は顔も体も女優顔負けの西園寺刹那。ていうか、最近ニュースに出てくる脂が乗っている女優より美しいと思うんだけどな。
外見は申し分ない。けど、中身がね。怖いんだよね。
俺は顔を一瞬引き
いよいよきたか。
俺が立ち上がろうとした瞬間、携帯が鳴った。
「今行く」
バックパックを背負って下に降りると、高そうな外車SUVが止まっていて、二人の女性が俺に視線を送っていた。
ゆきなちゃんは短いスカートと可愛い柄がプリントされたシャツを着ている。同年代の小学生男性の視線を釘付けするほどの美貌だ。
西園寺刹那は明るい系のワンピースを身に
ちょっと離れたところから見てみると、あの二人の容姿は現実離れしている。
いつも近くで見てきたから気づかなかったが、今こうしてあの二人を眺めていると、俺がどれだけレベルの高い人とお付き合いしているのかがはっきりとわかる。
「お兄ちゃん!」
「ふぇ、あ、う、うん?」
「なんか、目がいつもより腐ってるよ。どうした?」
「あ、ごめん。つい見惚れてしまったというか何というか」
いかん!常日頃から清い精神状態を維持することを心がけている俺らしからぬ反応だった。ボーとなったり、何かを考え込んだりすると、俺の目がヤバくなるという事実をつい忘れてた。
「へえ。お兄ちゃんもやっと私たちの美しさに気づいたの?」
「ちょ、ゆきなちゃん!私たちってなによ!私も含まれてるの?」
西園寺刹那は慌てながらゆきなちゃんに抗議しているが、当のゆきなちゃんは微動だにしない。
「お姉ちゃんもお兄ちゃんにアピールするために今までにないくらい気合入れて、おめかししてきたで、、う、ううっ」
ゆきなちゃんが口角を釣り上げて説いていたが、途中で西園寺刹那が猛烈な勢いで妹の口を両手で塞ぐ。
「ちょ、ゆ、ゆきな!な、なにを言ってるのかしら?」
「うう、っおねえひゃん!いひ、いき、で、でひにゃい!」
「あ、ごめん!」
妹が息ができず苦しむ姿を見た西園寺刹那は、我に返って手を解いてくれた。顔面蒼白なゆきなちゃんは
別に隠さなくてもいいのにな。俺は西園寺刹那の素っぴんを見たことがある。ていうか、俺んちにきたときは、大体素っぴんだったしな。西園寺刹那がどれだけ時間をかけて化粧やらおめかしやらをしたのかは正確にはわからんが、この様子だと相当かかったんだろう。
だから事実を認めよう。
「二人ともすごく綺麗だ。俺が見入ってしまうほど」
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