第344話 2015年5月 25

「ねえ! あなた!」


小さな商店街を抜け、もう少しで港に出るその時、小さな歩道を遠慮なく全力疾走中の私を呼び止める女の人が……


「やっぱり!


リリィちゃん!


そうでしょう?


元々、大人びてたけど……

制服着てなかったら、まったく分からなかったよ……

本当に綺麗なお姉さんになったね……


私の事、分かる?」


分かる……

私に浴衣を着せてくれた……

私のワンピを作ってくれた……


けんたろーのお姉さん。


「わかります! けんたろーのお姉さん!」


「お帰り! リリィちゃん!」


その人は、咄嗟に私に抱きついて、街中なのにワンワン泣いていた。

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