第234話 ちょっと良いから陽葵、来い!

「先生、ちょっと」


俺は、昼休みの誰もいない教室で職員室に行こうとしていた陽葵先生を呼び止めた。先生は振り返り、


「なんですか」


うっすら笑みをたたえ、俺を見た。


「校長先生の事なんですが」


「……」


あきらかに表情が変わった。


「最近、満島先生をお見かけしていないのですが、どうかされましたか?」


「……入院されているんです」


入院……既に俺が気が付いて、いつから見ていないか記憶をたどれば、陽葵先生の話しとつじつまが合う。二週間の入院……今時では長いよな。


「何で? いつ頃、退院されるとかは……」


「石がどうこうとか言ってましたが、それ以外には、何も聞いていません」


「何処に入院されているんですか?」


「それが、私達も教えてもらっていないんです……」


俺から目をそらす、温存兵器。たまには役に立て!


「先生、お願いします。探ってください。先生から聞いたって言いませんから」


上目使いで俺を見つめる美人女教師は、


「……分かりました……

佐藤さんには色々、お世話になっているし、校長先生とのご関係を考えると……


何として探し出します」


辺りを気にしながら、陽葵先生は俺にそう言って約束してくれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る