第222話 夜陰2

「ん? これ……」


顔の前に、カードキーを見せる。


「え?」


「いいよ、健太郎、そんなに私を好きなら、私なんかで良かったら……


いいよ。さっきも言ったでしょう?


私はそれでご飯を食べてるんだよ。健太郎の好きがどの程度か、ちゃんと理解している。理解しているから、だから、いいよ……


でも、私の事、汚いって思うなら……


お金……


出して……


いくらでもいいから……


それなら、タダの客……

ケンちゃんにとっては、タダの商売女……


だから……」


俯くレイアさんのか細い声が聞こえてきた。


そんな……ずるいよ。

そんな事言われたら、断る方法が無いじゃないか……


俺はレイアさんが好きだ。


レイアさんの笑顔が好き。

レイアさんの声が好き。

レイアさんの人を思いやる優しさが好き。

レイアさんの俺を見つめる目が大好き。


なんだから。


エレベーターの中で、わずかな低音が響くエレベーターの中で、レイアさんは俺に大人のキスをしてきた。

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