第165話 雅さんの悩み3

「雅さんは、今、悩んでいます」


「はい」


郷田さんは、ソファで正対し、膝の前あたりで手を合わせ、それを見ながらゆっくりと、通る声で話し始めた。


「お子さんのことです」


雅さんには中学三年生の娘さんがいる。


「雅さんのお子さんは雅さんに、この仕事を辞めて欲しいそうです」


「そうですか……そうですね……」


理解できる。それは、そうだ。

職業に貴賤なしとは、よく言った物で、貴賤は無いのだろう……が、それはあくまで、建前だ。美しいスローガンのような物で、現実ではない。

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