第117話 温存兵器の使い道1

給食の後の教室で、リリィさんと陽葵先生が談笑していた。でも、少し違ったのは、陽葵先生がロシア語をペラペラしゃべっていた事だ。この嬢ちゃん、ほぼ今回のリリィさん奪還作戦で活躍することなく温存兵器としてだけ存在していたのだが……陽葵先生は隠れた特技をお持ちだった。


「先生、ロシア語喋れるんですか?」


「ええ、高校生の時、交換留学生としてモスクワに一年行っていたことがあるんです」


「そ、それじゃハラショーって言ってください!」


俺は年甲斐もなく、また、おねだりしてしまった。隣でジト目でみるリリィさんを横目にハアハアしながら、やばい奴の俺は薄っすら微笑む可愛いだけの温存兵器にお願いした。


「え? なんでですか?」


「けんたろーはハラショー萌えって言う、どうしようもない呪われた体質なんです。可哀そうだと思うんなら、一度だけ、恵んであげてください」


隣の12歳の棒セリフを聞きながら俺はクレクレ目線を送る。


「ハ、ハラショー」


ん? いや、可愛いよ。でも何だろ?何か足りない。


「ねえ、リリィさんやってくんない?」


「あ? なんでおかわりくださいみたいなの私やらなきゃいけないのよ!」


「だって、リリィさんのハラショーすっごく可愛いんだもん。大好き!」


リリィさんのツボは心得ている。もう俺の為に言いたくてしかたがないだろう! さあ、やるがいい、俺を悶え殺してくれ!


「ねぇ、そういうの、ズルいから……」


目を瞑り、リリィさんのハラショーを待つだけの俺に、


「はらしょー」


野太い声で……だれだ。


「何してるんだね。佐藤君」


満島先生が割って入ってきた。いつからいたんだ。


満島先生の後ろで、完ロリと温存兵器が腹を抱えて笑っていた。

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