第95話 宿題総力戦3
「何をそんなに大声出しているんですか?」
ことりちゃんが事務所に入ってきた。
「店長出来ました。読書感想文」
「ことりちゃん。待ってたよ。疲れた。読ませて」
『吾輩は猫であるを読んで』
おお、さすがことりちゃん。
『吾輩は猫である。このフレーズは日本人なら一度は聞いた事があるでしょう。それほどキャッチーなフレーズです。この漱石作品の中でも非常に珍しい猫目線の作品が生まれた背景について、当時の日本、および世界を取り巻く情勢から考察する必要性を…………』
読書してねー。論文だよ。
「店長、如何されました? 店長からのミッション終了いたしましたのでご確認よろしくお願いいたします」
郷田さんが分厚いA4ファイルを俺に渡してくる。
郷田さんにお願いしたのは算数ドリルのはずだが……やな予感しかない。
『計算ドリルの頻出問題傾向と対策』
あー……。
「頂いたドリルの全問題の分野ごとの頻出ヒストグラムとそれに元ずく対策として来年の予測を立てました。これで来年の出題傾向も完璧に予測可能です」
全問題を詳細に分類して、分類の小項目ごとに予想出題確立を表示した。円グラフとヒストグラムと表で構成され………………来年いらねーから。
「何? 店長? 出来たよ。家庭科の課題」
家庭科のミシンを使った自由課題。雅さんにお願いしてしまった奴。渡された袋を開けて広げると……
何だろう?
白黒チェック柄の長袖ミニスカAラインワンピース……
「秋物でさ、リリィちゃんが来たら可愛いだろうなと思って作ったよ!!」
おい……宿題だよ。自由課題で何でリリィさん用ワンピース作んだよ。
「リリィちゃんなら服に着られてないもんね。絶対、似合うよ」
だから、俺の宿題だって。
「店長! 書いて来たわよ」
美琴さんが半紙に書道の宿題をしてきてくれた。
………………
『百合の男』
……達筆で。
「店長、これでどうっすか?」
自由研究、充希……自由すぎる研究。
「ねえ、店長! こんなにみんなやってんのに何が不満なのよ! そもそも、夏休み終わりの、のび太君みたく泣いて私達に頼んだの健太君でしょう? 礼ぐらいいなよ!!」
6人に取り囲まれ形だけ礼を言っておいた。宿題は計画的に自分でやりましょう。
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