第81話 心の声が聴こえる美少女達

 駅で冴子と別れ、地元の駅に向かった。


 駅に着くと、いつもの重装備で咲が迎えてくれた。真菜は大学の新入生歓迎会に出席すると聞いている。今日の昼食はステーキ屋に決めた。


 この店は立ち食いだが、本格的なステーキを安く食べられる。二人とも国産のサーロインステーキを三百gで注文した。


 ステーキが来ると色んな食べ方で楽しめる。先ずは塩と下しワサビで食べる。俺はこのワサビ味が一番好きだ。次は下しニンニク。これも旨くて胃にガツンと来る。そしてステーキ醤油だ。咲はこのステーキ醤油が一番好きらしい。


 咲が食べきらない三分の一の肉を俺が貰う。そして俺達は満足するのであった。店を後にして、繫華街を抜け映画館の近くを歩いた。


 地元では、霊力を持つ女子が多い。「JAPAN」を合言葉に、ポセイドンのターゲットである「N」を探し求めていた。霊力を持つ女子同士は声を発してポセイドンの話題を語りあう事が出来る様になっていた。


 咲の率いる「TEAM JAPAN」は次の段階に入っていた。全ての日本にいる人間に、心の声が存在する事を伝える仕事だ。「自ら蒔いた種は自ら刈り取る」を実践する時が来たのだ。歩道を歩きながら咲の決意は固まった様だ。


 俺はまずテレビ局の太田信二さんに連絡した。俺がまだ兄の会社で営業をしていた時に、テレビ局の本社でお弁当を販売して、連日行列が出来る店として名をはせていた。チーフディレクターの太田さんが興味を持ち取材したいと言われ名刺交換をしていた。


 その直後、俺は精神を病み、精神病院に入院して、取材の話が流れてしまった経緯がある。今回、「心の声が聴こえる美少女達」という企画で取り上げて貰える事になった。


 ロケ地は地元のショッピングモールの広場に決まった。


 テレビ初登場と云う事で「TEAM JAPAN」は色めき立った。取材を受けるのは、十二使徒のリーダー格である綾にお願いした。取材当日は強い雨が降っていた。俺と綾は初対面だ。エキストラとして咲と真菜と絵里も来ていた。


 取材が始まる。


 先ずは、ADが心で思った事を紙に書き、それを綾が当てると言うモノだ。十回行って、綾は全て当てた。マジックでも見てる様だとざわついた。


 次は霊力を持っていると言う、一般の女子高生が参加した。綾と向かい合い、心の声で会話して、それを紙に書いて行くというモノだ。会話が成り立ち、会場から拍手が沸き起こった。


 最後に真菜が代表としてインタビューを受けた。嘘の無い、犯罪が起きない社会にしていきたいと訴えていた。まるで政治家の街頭演説の様だった。


 ロケが終わり、太田さんにお礼を言い解散となった。


 放送は3日後の午後6時だと言っていた。この放送は日本をはじめニュースとして世界中に波紋を呼んだ。綾をはじめ、出演者全員の顔にモザイクをかけて貰う約束を

しておいて正解だった。特に綾はモデルとして女性誌の表紙を飾る程の売れっ子なのだ。


 咲は近いうちに分かる事だから、そんなの関係無いよと言った。


 ゴールデンウィークを迎え、咲が水晶占いを始めて1年になろうとしていた。俺達は日曜日の桜田教会の礼拝に行くのを控える事にした。これは咲の提案だが、牧師の藤原さんに霊力を授け、礼拝の質が向上した。自分たちの役目は終わり、次のステップアップをしたいとの事だ。


 この意見に俺と真菜は賛同した。教会は俺達を成長させてくれた。

 いつの日か藤原さんと再会したい。

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