第78話 真菜の合格祝い

 3月に入り、真菜の大学合格発表の日が来た。


 今は昔と違い、インターネットで合否が分かるそうだ。時間になり真菜から「合格」の知らせが心の声で届いた。俺があげたお守りが利いたと喜んだ。


 合格祝いは、ノアの日本料理屋でやる予定だ。待ち合わせは5時半に店の前に集合だ。この日本料理屋は和食の創作料理店で魚料理が美味しい。席はかまくらと呼ばれるお洒落な個室を予約した。


 時間になり店に着くと、咲と真菜がすでに待っていた。


 店に入り咲のリクエストで、赤ワインでの乾杯となった。真菜は二十歳前なのでアルコールは飲ませられない。オレンジジュースでの乾杯だ。マグロのカマ焼と生野菜などを頼んだ。今日の主役は真菜だ。今後の「TEAM JAPAN」のリーダーとしての展望を聞いた。

 

「真菜は霊力を誰かに授けたの?咲は戸籍が無いからパスポートを作れず、海外に行けないけど真菜は行けるよね。世界中に授けられた霊力を持つ生命達に会いに行くのかな?ポセイドンプロジェクトの事とか説明が難しいと思うけど責任が重いよね。」

 

「ノンさん、わたしはまだ誰にも霊力を授けていません。相手の人生を激変させてしまうので、咲さんの様には行きません。海外の事も白紙です。応援が必要な国の子がいたら咲さんのアドバイスの元、行動に移していきたいと考えています。寿命が短くなったので急がないといけないと思っていますが、慎重に動いて行きたいです。」

 

「ノンは本当に真面目だね。せっかくの合格祝いなんだからもっと楽しい話をしようよ。例えば富士急ハイランドにはいつ行こうとかさ。もうすぐ4月だしノンの誕生日祝いを兼ねて行くとか。」

 

「俺の誕生日は4月3日の火曜日だよ。平日で富士急ハイランドは空いているとは思うけど良いの?」

 

「良いよ、仕事を休めば。真菜は?」

 

「大丈夫です。息抜きは大事なので」

 

「それじゃ俺が高速バスと富士急ハイランドのチケット取っておくから。でも俺、五十四歳だよ。子供が欲しいとか言うの無しね。」


「えぇっー!ポセイドンプロジェクトのクリアした後の楽しみなのに!真菜とあたしと二人ずつ産もうねって計画してるのに!」

 

「わたしも悲しいです。」

 

「まぁまぁ、取りあえずポセイドンプロジェクトのクリアが先だね。俺はもう自分を追い詰めないって決めたんだ。また発作が出て自殺とかってなるのも嫌だし。」

 

「うぅ、ノンに死なれるのは困る。子供は天の神様からの授かりものだから自然に任せよう。」

 

「話が変わるけど真菜は一人暮らし諦めたの。部屋を押さえてたよね。」

 

「両親に心配かけたく無いので諦めました。せっかくノンさん達と同じマンションに住めると思っていたのに残念です。キャンセル料を払い、解約しました。」

 

「そうなんだ。それじゃあ子猫でも飼えば良いんじゃない?癒されるよ。」


「ノンさん、実はもう里親募集に行く予定なんです。一人で部屋にいると、寂しくてどうにかなりそうなので。家に帰ればノンさんが待っていてくれる咲さんが羨ましいです。」

 

「あたしは、ノンに感謝してるよ。真菜には申し訳ないけど、ノンを独り占め状態だからね。真菜が大学に行く様になれば男にモテるだろうし。彼氏とか出来たりして。そうなればあたしも心おきなくノンと過ごせる。どうなんだろう。えへっ。」

 

「咲さん、それは無いです。わたしがサクラになる気持ちになったのはノンさんがいるからです。例え織姫と彦星の様に、一年に一度しか会えない事になってもこの愛は消せません。そうですよね、ノンさん。」

 

「うん、そうだね。ところで里親募集ではどんな子猫を選ぶのかな?名前とか決めてるの?」

 

「女の子にしようと思っています。名前は『シェリー』にします。ノンさんがカラオケで歌う、尾崎豊の曲名です。名曲ですよね。ノンさんの影響で尾崎豊の曲、全曲ウオークマンに入っているんです。若くして亡くなったのが残念です。」


 真菜の進路が決まり、いよいよポセイドンプロジェクトが本格的に動き出すのであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る