56センチ目「よーい、アクション」
「
俺はとっさにスキルを唱えた。知らない敵と戦うときにはまずこれだ。
「種族:ゲームハード、スキル:
おそらく、『
「
「リバサのスキルを解析しようったって無駄だよ。そんなやり方で攻略されたらつまらないからね」
悠斗は得意げな笑みを浮かべながらふんと鼻を鳴らした。
その間にも、リバサは半透明の足場を転々と飛び移っていく。
彼は天井近くにある足場までたどり着くと、丸いカプセルのようなアイテムに触れた。その瞬間、カプセルはひとりでに消滅し、リバサの体を鮮やかな赤のエフェクトが包んだ。
「手始めにこいつで攻撃するぜ!」
リバサが手を前に突き出すと、手のひらから火の玉が発射された。クリアとミラは足場を飛び移りながら、それをかわしていく。
「なかなかすばしっこいな。なら、これでどうだ!」
リバサは壁に向けて火球を乱発した。どういう原理なのか、壁に跳ね返った火球が室内を縦横無尽に跳ね回る。
「
「サンキュー、美咲!」
ミラは、片手に丸い鏡の盾を出現させ、火球を丁寧に受け止めていく。
このままではさすがにまずいと思い、俺もスキルを発動することにした。
「クリア、これ使え!
「オッケー!」
クリアは迫り来る火球を腕から生えた刀で打ち落としながら、さらに足場を飛び移る。
そのとき、移動した先の足場に設置されているカプセルを見たクリアは、とっさにそれに触れた。
「わたしだって!」
「おい、危な――」
俺が止める暇もなく、クリアの体を青いエフェクトが包み込む。
すると、その直後からクリアは高速で移動を始めた。走るスピードだけでなく、ジャンプの高さも数倍まで高められているようだ。
物理法則を超越したその動きに、俺は目を丸くした。
「ちぇっ! いきなり当たりかよ!」
リバサは巧みに逃げ回りながらクリアとの距離を取る。
しかし、クリアのスピードの方が圧倒的に上だ。次第に追いつくクリアを見て、リバサは渋面を作った。
「もうダメだ……!」
クリアが追いついたと思ったその瞬間、リバサの体を黒いエフェクトが包み込む。
「なーんちゃって」
リバサは笑みを浮かべると、巨大なハンマーを出現させた。そして、足場を飛び移りながら突っ込んでくるクリアに向かってフルスイングした。
クリアはすでに空中に飛んでおり、方向転換することができない。そのまま、ハンマーに向かって高速で突っ込んだ。
ジャストミートとはまさにこのことだろう。ハンマーの先端についた黒い塊はクリアの体を正確に捉え、豪快に打ち飛ばした。
クリアは寸前で両腕を前に出してガードしたが、部屋の反対側の壁に背中から叩きつけられると、真下の床に力なく落下した。
「クリア!」
どうやら気絶しているらしく、俺が呼びかけてもピクリとも動かない。
それを目にしたリバサは口をへの字に曲げ、肩をすくめた。
「なんだ、もう終わり?」
「起きるまで待ってあげようよ、リバサ。これで退場っていうんじゃあ全然つまらないよ」
「そうだね。ほら、早く起こしてきなよ、きみのツクモを」
持っていたハンマーが消滅すると、リバサは立っている足場にしゃがみ込んでこちらを悠々と見下ろした。強者の余裕とでもいいたいのだろう。
俺は敗北感と屈辱感を覚えながら、クリアの下に大慌てで駆け寄った。
「大丈夫か、クリア!?」
「うん……なんとか……」
まだ目を回しているクリアを抱きかかえながら、俺は美咲たちの様子を眺めた。
「あたしたちのこと、忘れてもらっちゃ困るんだけど!」
リバサは上半身を反らして、ミラの蹴り足をひょいとかわす。
「そうだったね。君たちはアイテムを使わないの?」
「そんなもの必要ないっしょ!」
「ふぅん、そういう戦い方もあるんだ。でも、この空間じゃそれは不利だよ」
後方宙返りで上方の足場に飛び移ると、リバサは新たなカプセルに手を触れた。黄色いエフェクトがリバサを包み込む。
ミラはリバサを追って同じ足場へ飛び乗った。その瞬間、リバサは足場に右手を当てて逆立ちした。
「火の次は電気だ!」
「ぐああああああっ!」
リバサの手から発せられた電撃が足場全体を覆う。もちろん、そこに立っているミラも例外ではない。
ミラは絶叫しながらその場にくずおれた。
「ミラ!」
美咲の悲痛な叫びがこだまする。
リバサはミラに歩み寄ると、拳をぐっと握りしめた。
「まずは一人目――」
腕を振り下ろそうとしたリバサに向かって、ブーメランが飛来した。リバサは上体をひねってそれをかわす。
その一瞬の隙に、ミラはなんとか立ち上がり、下の足場に逃れることができた。
ブーメランをキャッチした俺を、悠斗は楽しそうに見つめた。
「へえ、やるじゃん! そういうプレイもあるんだね!」
「持ち主がアイテムを使ってはいけない、なんてルールはどこにもないだろ?」
「もちろんだよ! これは面白くなってきたね! 第二ラウンド開始といこうか!」
ようやく立ち上がったクリアを一瞥すると、リバサは首を左右に曲げてストレッチした。
一筋縄では行かない彼らの強さに、俺は内心舌を巻いていた。
このゲームの攻略法は果たしてあるのだろうか。
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