第60話 意味の亡き日。1/4
その魔人の
「あらあら、うふふ。アナタの性格の悪い趣味がバレちゃってるみたいねラムレット」
「……」
巨大な高解像度スクリーンモニターに映し出されるというよりは窓の外を
貴婦人のドレスを纏う神ミリスは名残惜しそうに残り少なくなった
『どういう事だ……何が言いたい』
『だからよ、お前を連れ回してきた神様が異世界転生賛同派の神かもしれないって話だ。ロクでも無い異世界転生者を殺し合わせる事を
しかし
『簡単に言うと……そうだな、お前の言う性格が歪んだ転生者を呼び出して力を与えて暴れさせて、お前みたいな復讐者を創り出して遊んでるんじゃないかって御伽話だ』
『まったく異なる小さな世界を幾つも抱えて神と
『もしかしたら——お前が殺してきた転生者やソイツらが居た世界も、その神の
度重ねられる
「素晴らしいわね。病気を疑うくらいの突拍子もない正解……ねぇ、さっきから一言も声を聴いていないのだけど、そろそろ今の気分を私に聴かせてくれないかしら
だが、むしろ神ミリスはそれを
ミリスの、穏やかなその表情からは
「……ふん、くだらないわね。とてもつまらない茶番だわ」
それに対し、ようやくと重くなっていた口を開くラムレット。一口飲んだ白濁の濁り酒が
『なにを……何を言っている……何を。アイツは、アイツがそんな訳が分からない事を……』
「だって、私の洗脳は完璧だもの。それに真実を悟られる事に何の意味もないでしょう?」
とても冷酷に、戸惑う彼女の信者の声よりも、流れいく床の白濁が自身の服や靴を汚さないように気を配って目を伏し見下して。或いは冷徹に興味を失い目を閉じる。
『——根拠は幾つかある。証拠じゃないけどな』
「「……」」
だが、魔人の言葉を彼女らは無視する事が出来ない。興味深い人々の
まるでテレビの音響に心を惹かれるように。
『一つは、あのレヴィって女が逃げた事……聞いた話じゃ、空間転移でアッサリ逃げたそうだ。そこから俺達との距離もかなり離れていたし時間もあった。普通の仲間なら撤退を伝えに来ても可笑しくは無いはずだ』
『空間を自由に転移できるなんて便利な魔法があるなら特にな』
さながら刑事ドラマの最後の締めの場面を視聴するが如く、魔人イミトの病的な推理劇にそれぞれの思惑を湧き上がらせる神々。行き先へと向かう過程に、如何ばかりの説得力があるかを品定めしながら、傍らの小さな足の長いテーブルに各々の飲み物のグラスを置いて。
『神様の候補だってのに、
『つまりお前はレヴィって女にとって、危険を
——その時だった。ふと魔人が声に漏らしていく思考展開に微笑みつつも、何処か寂しげな表情で眉を下げたミリスが感想を言葉にしたのは。
「——ねぇラムレット。私はね……完璧なんて、神が決めるべきではない事だと思うの」
「それは、世界の限界と停滞なんですもの」
「人だけが決めるべきものなの。私たちは——そう、彼らを信じるだけなのよ」
とても静かやかな声で
『そして二つ目——これが一番の理由だが、テメェは弱すぎるんだよ』
『別に俺が強いって自慢話じゃねぇんだ。ただ……俺にすら
『……』
「……」
その言葉たちに、それぞれ冷ややかな横目が向けられて。
時同じく、返す言葉が無い様子で閉じられた瞼の裏で、思考の整理は始まる。
『まぁ、他にも幾つかあるんだが……残りは自分で考えな。案外、走馬灯って奴の時間も裁判の待ち時間を含めれば相当に長いからよ』
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