今はまだ・・・

勝利だギューちゃん

第1話

「ぼく、〇〇ちゃんとけっこんしたい」

「いまはまだだめ」

「どうして?」

「わたしたち、まだようちえんじでしょ?」

「じゃあ、いつけっこんしてくれる?」

「おとなになって、きみがゆめをかなえたら」


幼稚園の頃、好きな女の子がいた。

結婚を夢見ていた。


でも、幼稚園の頃の想いなんてすぐに消える。

去る者は日々に疎しではないが、離れてしまえば想いは失せる。


結局、その愛はまやかしてしかないのだ。


そんな遠い日の想い出は、もう心の中の宝箱に封印した。

おそらくは、もう開けることはないだろう。


そして、月日は流れて、僕も社会人となった。


小さいころは、夢を見ていた。

しかし、大人になると、厳しい現実をつきつけられ、限界を感じる。


夢なんて追いかける暇なんて、なくなるのだ。

と言えば、負け犬の遠吠えになる。


「あんた、いい人いないの?」

「俺が生きている間に、孫の顔見せろ」


いつまでたっても、独身でいる僕に、親が言う。

余計なお世話だ。

あきらめてくれ。


しかし、おせっかいな知り合いはいるもので、勝手に見合い話を決めてくる。

断りたくても、「せっかく紹介してくれたのに、悪いから」と、母が言う。


女というのは、世間体を気にするんだな。


まあ、いい。

見合いの席で、「ご趣味は?」と訊かれたら、「アニメと鉄道」と答えよう。

これで、破談になってきた。


で、何度目かの見合いの席に着いた。


顔は写真で見たが、見覚えがある気がする。

気のせいか・・・


女性が来ると、僕の顔を見るなり、彼女は口を開いた。


「あなたとは、今はまだ結婚できない」

そして、間をおいて続けた。


「あなたはまだ、夢を叶えていないでしょ?

あなたが夢を叶えたら、その時は結婚しましょう。


私は、何年でも待つわ」

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今はまだ・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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