第17話 出版社を意識して執筆する
小説を書くのはなぜか。
多くの人は「読み手を楽しませたい」から。
ですが「紙の書籍化」を目指している方もいらっしゃいますよね。
それなら小説投稿サイトの一般ユーザーだけを意識してはなりません。
「紙の書籍化」してくれる「出版社」を意識しなければ、書籍化には近づかないのです。
では「出版社」を意識した執筆とはどういうものか。
簡単です。
小説投稿サイトで開催される公式の「小説賞・新人賞」へ応募する原稿だけを書けばよいのです。
それだけでよいのか。
もっと一般ユーザーを取り込まなければ難しいのではないか。
確かに「カクヨムコン」は一般ユーザーが一次選考を担っていますので、彼ら彼女らを意識して日頃からファンを広げていくのはよいことです。
ただし募集ジャンルの多い「カクヨムコン」なら、これまで書いた作品をすべて応募する、くらいのことはしましょう。
つまり、日頃からファンを楽しませつつ、それらの作品すべてを応募してしまえばよいのです。
「カクヨムコン」はひとり一作と決まってはおらず、すでに投稿済みの作品でも応募できますので、これを利用しない手はありません。
一度どこかの賞に出した作品でも、手直しをしてあれば再度応募してもよいとの規約も確認してあります。
将来「紙の書籍化」を狙っているのなら、それ以外に労力を割くべきではないのです。
書く作品すべてを「小説賞・新人賞」に応募するつもりで書きましょう。
「紙の書籍化」が目的なのですから、出版社が「これはぜひともうちのレーベルから出版したい」と思わせる作品を書かなければならないのです。
いくら一般ユーザーのウケがよい作品を書いたところで、出版社が「出したい」と思わなければ意味がありません。
小説投稿サイトで爆発的な人気を誇る作品がいつまで経っても出版されず、それより人気の劣る作品が出版されていく。
「小説投稿サイトあるある」ではないでしょうか。
こういう状況こそが「出版社を意識した執筆」のたいせつさを示しています。
いくら小説投稿サイトで流行っているジャンルや設定でも、「紙の書籍化」された数多の作品とかぶってしまえば売れ行きは落ちます。
二匹目のドジョウを狙う出版社もありますが、一匹目を超えるのは至難です。
それがわかっているから、出版社は必ずしもランキングトップを「紙の書籍化」しません。
たとえ一般ユーザーの評価が低くても、類を見ない作品のほうに可能性を見出す。
それが現在数少ない「出版社の矜持」でもあります。
現在、出版社は岐路に立たされています。
「紙の書籍」を出し続けるべきか。
「電子書籍」に全面的に移行するべきか。
全盛期から半減しましたが、今でも書店が全国各地にあります。
そこをターゲットとして市場を形成するだけでよいのかどうか。
とくに今の若者は「紙の書籍」をあまり読みません。新聞すら読まないのです。
ニュースはネットニュースで事足りますし、娯楽小説も小説投稿サイトへ行けば無料で読める。
この状況で、それでも「紙の書籍」を出し続けるのは「出版社の矜持」だけです。
出版社である以上「紙の書籍」を出版して、書店で売る。
この「書店ネットワーク」が途切れれば、出版社自身の命脈が絶たれます。
だから出版社は「売れる紙の書籍」を求めているのです。
そしてそれは「小説投稿サイトで人気ナンバーワン」とは限りません。
もし同じような作品ばかりが出版されたら、読み手はすぐに飽きてしまいます。
「この内容なら、小説投稿サイトで無料で読める作品でじゅうぶんだ」
そう思われたら終わりなのです。
だから出版社は「売れる紙の書籍」を出して、マルチメディア戦略で展開しようと考えます。
ひと粒が何度でもおいしい。
そういう小説こそ、出版社が求める作品なのです。
だから一般ユーザーのウケばかりを狙った小説は「紙の書籍化」しません。
「紙の書籍」として現物を買ってもよいほどの質が担保されなければ、たとえ小説投稿サイトで人気があっても、大賞にはなれない。
「小説賞・新人賞」を獲るには、人気を先鋭化したふたつとない作品か、誰も足を踏み込まないが出版すれば確実に売れる作品のいずれかが求められます。
「紙の書籍化」に値する作品だけが大賞を獲れる。
ものはよいので、あとは手直しすれば売れる作品は優秀賞にとどまります。
あなたは小説投稿サイトの一般ユーザーを楽しませるだけで満足しますか。
それとも「小説賞・新人賞」を獲って「紙の書籍化」そしてプロとして書き続けたいですか。
それによって、誰を相手に執筆すればよいのかが変わります。
出版社を見据えながら、一般ユーザーを取り込んでいくのが最適解です。
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