第6話
望は床に仰向けになった状態で、寧々の死体を抱きしめていた。
「HEY、Msノゾミ。ダイジョーブですか〜?」
キャサリン先生は陽気に尋ねた。
「うるさい。」
望は呟くように言った。
「What?」
「うるさいって言ったのよ!なんで寧々を殺したの!?拳銃を下ろしてたじゃない!?」
望はキャサリン先生に向かって怒鳴り付けてから、そっと寧々の死体を抱きかかえて、上体を起こす。
「あなたをprotectするためデス。」
キャサリン先生は銃を掲げてウィンクをしてみせた。
「だから、寧々は拳銃を下ろしてたって言ってるじゃない!どうして殺したのよ!?」
望の怒声が夕方の教室全体に響き渡る。
一瞬間を開けて、キャサリン先生は答える。
「岡村ネネは一瞬アナタを殺す事をためらったダケかもしれませんデシタ。ワタシにはアナタを護る義務がありますので、岡村ネネを生かしておくリユウがありませんデシタ。」
キャサリン先生の透明な茶色い瞳は、全くといっていい程に人間味に欠けていた。
「私を、守る‥義務?どう言う事?」
望は寧々の死体をキャサリン先生から守るようにギュッと抱いて尋ねた。
キャサリン先生は不気味に瞳を見開いて不敵な笑みを浮かべた。
「Ms.ノゾミ、アナタは選ばれた者なのです。VIPなのデス。ワタシにはあなたを催事場に送り届ける義務があるのデス。」
キャサリン先生は両の腕を大きく広げて言った。
「催事?『欲望の果実』を手に入れる催事の事?」
「That'sright!」
キャサリン先生は左手の人差し指で望を指差して大きな声で言った。
「アナタはワタシと共に一週間後にドイツに向かいマス。もちろん飛行機はこちらでヨウイします。Because you are VIP!そこで『欲望の果実』を手に入れるための催事に参加してもらいマス。Are you OK?」
「ふざけないでよ!」
望は怒鳴る。
「人殺し!意味わかんない事言わないでよ!人殺し!人殺し!」
望は怒鳴りながら寧々の握っていた拳銃を取り、キャサリン先生に銃口を向けた。
「Calm down.Msノゾミ。」
キャサリン先生は静かに言う。
「ワタシを殺しても、またお迎えが来ます。」
その冷たい言葉に、望は戦意を失う。
逃げられないのだ、このわけのわからない運命からは。
「それから、岡村ネネの死体は片付けないとデスね。誰かに見つかっては困った事になりマス。こちらでショブンしマス。少し骨が折れマスが、バラバラにして溶かしてしまえばno problemデス。」
そう言ってキャサリン先生は望と寧々に一歩近づく。
望は立ち上がって銃口をキャサリン先生に向ける。
「近づかないで!寧々に触らないでよ!」
「Oh,Msノゾミ、ではどうするのデスか?警察に行きマスか?残念ながら、ニッポンの警察ではワレワレは止められません。」
キャサリンは両手を上げてお手上げポーズをした。
「質問がある。寧々は『欲望の果実』を使って人生をやり直すと言ってた。そんな事、本当に出来るの!?例えば死人を生き返らせる事も出来るの!?」
望は拳銃を下ろす事なく怒鳴るように尋ねた。
「『欲望の果実』に叶えられない願いはありまセーン。」
望は瞳をギラつかせて言う。
「だったら私は寧々を生き返らせる!『欲望の果実』の力を使って!それまで寧々の死体は私が預かる!頼れる人が居るから、そこまで寧々を運ぶのを協力しなさい!」
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