第90話 豊作

 拝啓、地球のお父さんお母さん、俺は今、9歳の女の子のパンツをまさぐっています。

 どうしてこうなった?


「あははははは、くすぐったいよ」


 目の前の女の子リタは、パンツに手を伸ばしている俺の腕を両手で掴んで爆笑していている。

 これが地球ならタイーホ案件なのだが、この地に来て幾度となく老婆のパンツをまさぐった、プロの魔力付与師であるこの俺にかかれば、アウロリな少女のパンツをまさぐるなど、ただの日常の一コマなのだよ。

 わかってくれるかい? 地球の諸君。


「もう少しだから我慢してくれリタ」


「んんっ、うぐっ、だ、だめ! だひゃあははは! ムリムリッ! あはははは」


「あーそんな動くなって、触りにくいから」


「だってくすぐったいんだもん!」


 内気そうな少女だと思っていたのに、このリタという少女はなかなかどうして笑い上戸らしい。


 場所は村の新築住居の一室、とりあえずの滞在場所として圭一行が寝床にしている新築の空き家だ。

 その一室に上がジャージで下がパンツ姿のリタの股間に、圭がお触り儀式をしている、といった構図なのだが。

 そしてギャラリーとしてリーゼとミミルがその儀式を見守っている。


「1分経ちましたにゃ」


「おう!」


 タイムキーパーのミミルによる宣告に合わせて圭の指がリタのパンツから離れる。

 肩を震わせながらリタがくすぐりの刑から解放され、脱力のままに床にしゃがみ込む。


「あはっ、息が、ハァハァ、死ぬかと思ったぁ~」


「あまり刺激がないようにソフトタッチにしたのが裏目に出たのかも。

さすがに小さい子にコレをするのは初めてだから加減がわかんねーな」


 へたりこんだリタが自分の両手を開いて見つめる、全身に溢れんばかりの魔力がみなぎっている感覚に驚きの声を上げる。


「あれ? なにこれ? 体が魔力で……すごい!」


「お、魔力がちゃんと付与されたみたいだな。

どうだ? 麦畑、全部出来そうか?」


「これだけ魔力があれば、出来ると思います!」


「それは良かった」


「さあブルーレット、次は私の番だよ」


「ちょっと待て、リーゼの出番は今日は無さそうだろ」


「使うか使わないかは問題じゃないんだよ!

目の前であんなの見せつけられたら嫁としては黙ってられないのっ、ほら早く!」


「んな理不尽な」


 スカートをたくし上げ迫るリーゼに降参した圭はおとなしくグリグリすることにした。

 言うまでもなくその後ミミルにもグリグリである。


 みんなでグリグリすれば怖くない、そう、これは必要な儀式なのだ。

 賢者モードでそう自分に言いきかせる圭だった。



 場所は移り、村の麦畑。

 面子は圭、リーゼ、ミミル、リタ、そしてゲストの村長にサトウ含めた元悪党3人組。


「それで、ブルーレットさん、この畑で一体何をなされるのですか?」


「まあ、見ててよ、面白い事が起きるから」


 村長の問いかけに笑顔で返す圭だが、その笑みはどこからどう見ても邪悪な魔族の笑みだった。

 村長他3名に向き直って圭がリタの肩に手を乗せ紹介する。


「この子はリタと言って孤児の1人なんだけど、ちょっと面白い魔法が使えるんだ」


「魔法? それが麦畑と関係があるのかブルーレット」


 サトウがぶっきらぼうにいつもの口調で圭に問う、だた今までの圭がしでかしてきた事を考慮すると、若干の恐怖が表情に見え隠れしている、また何か想像のナナメ上をしでかすのではないかという感じだ。


「うん、この麦畑がね」


「今まで何度も驚かされてきたきたけどよ、今日は控えめで頼むぞ」


「それは無理だな、今夜は村あげてのカーニバルになるから」


「カーニバル? ってなんだ、響きがすでに怖ぇよ」


「それじゃリタ、この畑、全部やってくれるか?」


「うん、頑張るね」


 あぜ道に並ぶ全員が見守る中、畑に向かい足を踏み出したリタがあぜ道の際で畑に向かって両手を掲げる。


「いくよ」


 練られた魔力が光の粒子となりあぜ道に区切られた畑の一面にキラキラと降り注ぐ。


「おおー、これはキレイだな」


 感嘆の息を漏らす面々。


「あ、どうせならリーゼとミミルには魔力じゃなくて力を付与すればよかったな。

収穫のこと考えてなかったよ俺」


「収穫?」


 首をかしげる村長。


「見てればわかるって」


 全員が畑を見守るなか光が麦の根に吸い込まれ、やがて黄金を湛えた麦穂の海へとその姿を変える。


「おおおおおお! これはっ」


「おいブルーレット、俺は夢でも見てるのか?」


「リタちゃん凄いっ! これで村の食料は安心だね」


「ねえブルーレット、これは一体どういう事なの!」


 村長、サトウ、リーゼ、ササキの順でそれぞれが言葉を口にしていく。


「えーとねササキさん、これはリタの魔法で、リタは植物を成長させることができるんだよ、すごいでしょ」


「相変わらずの変態っぷりねぇ、ワタシ大抵のことじゃもう驚かないと思ってたけど、やっぱりブルーレットはブルーレットだわ、ゾクゾクしちゃうわ」


 クネクネと身をよじるササキもまた安定のササキだった。

 常時小指が立っているのはデフォなのね。

 村長は村長で愛おしそうに麦の穂を手に取りその実りの感触を味わっている。


「まさか年に2度も麦が見れるなんて、信じられないですよ」


「だから食料のことはなんとかするって言ったでしょ? リタがいれば空の食糧庫を麦で一杯にできるよ。

せっかく食糧庫を建てたんだからね、使わないともったいないし」


「ですな、それにしてもこんな魔法があるとは」


「まあ、俺も知ったばかりなんだけどね、ほんと偶然だよリタに出会えたのは。

さてリタ、残りの畑も全部やってくれるか」


「はい」


 圭の指示を受けたリタは次の一面へと向かい、それから麦を成長させていく。

 その様子を見ながら圭がミミルに向き直った。


「なあミミル」


「なんですかにゃ、ご主人様」


「ここには無駄に土地が一杯あるんだよね、もったいないと思わない?」


「そうなんですかにゃ?」


「そうなんだよミミル君、前に土魔法で畑の土に変えられるって言ってたでしょ。

麦畑を新しく開墾することできるか?」


「できますにゃ! やるですにゃ!」


「うんうん、やってもらおうミミル農林大臣」


「ノウリンダイジン? ねえブルーレット、私は何すればいい?」


「リーゼはそうだなぁ~、あ! 風魔法で麦刈り取ってあぜ道に積み上げてくれるか?

とりあえずこの1面だけでいいよ、ミミルが開墾した畑の種籾にするから」


「オッケー!」



 圭の指示の元、魔力付与された3人がそれぞれに動き出した。

 

「村長さん、大量の麻袋と台車ある?」


「ええ、ありますとも、村の衆を集めて持ってきましょう」


「いや、せっかくの収穫イベントだし、今日は麦畑を一杯にするだけにしておこうか。

収穫は明日以降のんびりやろうよ、前回の徴税みたいに急ぐワケでもないし」


「それもそうですね、だたこの光景をすぐにでも村の皆に見せたいのですが」


「それならいいんじゃない? 呼んでくるぐらいなら」


「それなら俺が集めてくる」


 サトウはそう言い残し集落のほうへと歩いて行った。


 ミミルは土魔法を使いあぜ道の成形を含めて麦畑の開墾を進めていき、やがて麦畑は元の広さの5倍までに広がった。

 その後を追いかけるようにリーゼが収穫した麦穂から、種籾を取り出した圭が種を畑に蒔いていく。

 そして種を蒔いた畑にリタが魔法をかけて回る。


「こんなもんかな」


 2時間くらいで黄金色の海が出来上がった、全ての畑に麦穂が実り、風に揺れていた。

 その景色は壮観の一言に尽きる。


「こうして見ると凄いな、畑もかなり広がったし」


「そうですね、やはりブルーレットさんはブルーレットさんですよ。

これだけあれば毎日パンを食べられます、孤児達もお腹を空かすこともないでしょう」


「村長さん、今日はこのぐらいにしておこうか、明日から村人で収穫していけばいいよ。

俺達はリタを連れて他の村全部まわっていくから、あとのことは頼んだよ」


「わかりました、これだけお膳立てして頂けたのですから、あとは村人で収穫は行います」


「リーゼ、ミミル、リタ、3人ともお疲れさま」


 麦畑を後にした圭達は住居区に戻り、いつも通りに子供達に服を生成し渡した後、パンツ鳥で拠点の街へと戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

罪人の俺に課せられたのは【魔族+パンツ=人間】というルールだった なまにく @namaniku021ch

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ