特別な君に拾われて
白咲夢彩
プロローグ
この世界で、どうやら私は、場違いという言葉が似合う存在になってしまったらしい。
属しているのに、まるで首を切られてしまったような日々は繰り返す。明日はあるのに、明日はない。毎日、そんな視線が攻撃してくる。
濁った海の、この国で、濃く黒い波が私を飲み込み、遠くの沖へ運んでいく。もがいても、もがいても、当たり前の世界へは踏み出せることはなく、ただ、どす黒くなる日本の海の奥深くへと辿り着き、私は毎日、眠りにつく。
狭いこの、社会という空間で、泥を私にだけ擦り付けてしまった民は、起きたての私を今日も嘲笑う。
「おはようございます」
そんな朝の告白をしたって、誰も返すことはなく、普通である陸の民は、自分と同等の民と今日も過ごし、消えていく。遠い昔に、誰かが引いてしまった普通の線引きは、取り消すことなんて出来ず、受け継がれ、今の私を陸へ上げてはくれない。
朝も昼も夜も、私だけどこか離れた、外れた世界。
私は今日もまた、暗闇で、人工的に作られてしまった四角い太陽だけを見て、誰かがかじって、残った分のカスを、鉛の目で、片付けにいく。
普通の民がこの空間から居なくなっても、私は帰れず、ひとりでただ、残ったカスを処理するのだ。
私だけ、帰ることが出来ない。
私だけ。
皆の世界へ、踏み出せないまま。
この国が濁っているのか、私が濁ったのか。わからないが、どす黒く、いや、もう黒でもない、闇でも病みでもない、言葉に表すことの出来ない、謎の塊は、私を破裂させてしまったようだ。
残業終わり、駅、ホーム。
終電前、消える黄色い線。
「まもなく……番線……電車が参ります、黄色い線の内側に……」
ビックバン。それは突然起こる。
アナウンス後、時速六十、七十の殺人鬼が私を攫う前に、私は落ちた。
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