RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
第十話:ギルド試験狂騒曲③/生まれ落ちた世界
第十話:ギルド試験狂騒曲③/生まれ落ちた世界
「──なる程、
カティスの『
冒険者になる為に故郷を飛び出したこと、盗賊たちに騙されて
唯一、ふたりがラウラとトウリに言わなかった事は──その
「────あたしもフィーネも、この子に命を救われたんだ……多分。だから、宝箱から出てこようが、呪われた
「スティアちゃん…………!」
スティアもフィナンシェも『ヴァルタイスト地下迷宮』での探索の際に、カティスに
一度目は閉じ込められた石室から脱出する時。二度目は──ふたりには
命を救われたから、忌み子であっても助けたい。それがスティアとフィナンシェの主張であったが、
『だいじょうぶ、何があってもわたしだけはあなたの側に居てあげるからね。ぜったいに、わたしだけはあなたの手を放さないからね』
──いつかの記憶の欠片、『救われた少女』と『救った少女』の記憶。それがあるからこそ、スティアとフィナンシェには、カティスをどうしても見捨てられなかった。
「分かりましたわ。ですが、その子を連れてどうするつもりですの?」
「周りの奴らは、遠慮なんてしてくれねーぞ? それに──」
「
「────それは…………」
ラウラとトウリが突き付けた
それに、呪われた子を連れ歩けば、カティスのみならずスティアとフィナンシェも
『────呪われた魔女の子だ。その
「貴女方には『覚悟』がお有りなのですか? その“星の瞳”の赤子を連れて、この先を生きて行く『覚悟』が?」
ラウラが問い掛けるは『覚悟』──呪われた『
ラウラの真剣な眼差しが、スティアとフィナンシェに問い掛ける。
「あたしは──」
──あるとも、『覚悟』は──そう、言おうとした。
「あります。わたしはこの子の味方です」
──それよりも早く、フィナンシェが『覚悟』を示した。
(……ほう、あの死線をくぐり抜けて一皮剥けたでちゅか?
「──あたしもフィーネと同じ。この子を独りになんてできない……!!」
フィナンシェに
『──独りぼっちにして…………ごめんね、スティア』
──記憶の中の『
「どーすんだ、ラウラ?」
「…………はぁ、分かりましたわ」
トウリの問い掛けにラウラは渋々と答えると、それまで張り詰めていた“
ピリピリと震えていた空気が収まり、夕暮れの風が重い空気を何処かへと運んでいく。
「その『覚悟』がお有りなのでしたら、
「ラウラさん……ありがとうございます」
「
『──魔女の子だ! 殺せ! 殺せ!! 殺せ!!!』
瞳に“紋章”を刻まれし者は等しく──呪われた忌み子。
「それこそ、もし『教団』にバレようもんなら──
その者がいかに純真無垢だったとしても──等しく
『──騎士さま、おねがい……お母さんを助けてぇ!!』
そこに慈悲はなく、そこに救済はなく、そこにあるのは──ただ、地獄のみ。
『死ね──!! 忌まわしい魔女が──!!』
(…………また随分、
「あの──」
「そこまでです、トウリさん……! スティアさんとフィナンシェさんが『覚悟』をお持ちなのでしたら、
「…………わーったよ! じゃあ、おれも何も言わねえ……!」
「…………あたしたちの事を密告しないの?」
「いいえ、しませんわ。だって──
「────っ!」
「で、あんたらその子をどーすんだ? 教会やギルドじゃ、“呪い持ち”なんてまともに取り合ってくれねーぜ? 下手すりゃ、
「はい……だから、わたしとスティアちゃんとで、この子の『両親』を探してあげようと思います」
「ばぶっ!?(約:え゛っ!?)」
フィナンシェのまさかの発言に、カティスは思わずフリーズする。
(いやいや、
「本気なんですの?」
「──もう、決めた事だ」
(いつの間にか決めたんでちゅか!? 困るからやめるでちゅ!!?)
「もしかしたら──いいえ、
「それに、あんたらが踏み込んだって言う
(ちょーだ、ちょーだ!! もっと言ってるやるでちゅよ!!)
「その時は──わたしたちが責任を持って面倒を見ます……!!」
「──うん、絶対にこの子の手は放さない……!!」
(うおーー、やめろーーーー!? どんだけおれを連れて行きたいんでちゅかフィナンシェとスティアは!!?)
「……よろしいですわ。そうと決まれば、さっさとカヴェレに行きますわよ!」
「──だな。じきに夜になるし、
「そうだね。
「そうと決まればカヴェレにむけて出発だー!!」
「「「「おーー!!」」」」
(あぁー、ヤバいでちゅ!? 嫌な予感しかしないでちゅ……!!)
話が完全に『赤ちゃんの両親を探す』で纏まってしまった事に、カティスは言いようのない焦りを感じる。
(
──『魔王カティス』としては、
(そもそも──呪い持ちだろうがなんだろうが、おれの『
しかし、スティアとフィナンシェの冒険に巻き込まれれば、
(はぁ……しかし──、)
『故に──
(ふたりを生き返らせたのは、他ならぬ自分でちゅ。やれやれ……これが
しかし、スティアとフィナンシェの冒険に巻き込めれる事は、ふたりを生き返らせたのは自分の『
「だぁーだぁー!!(約:もう良いから早く街に行けでちゅ!!)」
──と、フィナンシェの胸を叩いて、早く行くようにアピールしているが、
「やん♡ どうしたの? ママのおっぱいやっぱり欲しいの〜?」
「だぁー、ちばぶーー!!(約:だー、違うーー!!)」
「あー!! 何やってんだコイツ!? あたしも混ぜろー!!」
「きゃー♡ やめてーー♡」
「ばぶぶーー!!(約:混ざるなーー!!)」
──
「なぁ……ラウラ、あいつら
「……
〜〜〜
「ねぇ、フィーネ、ほんとに作るの?
夕日が──遠くに観える霊峰に陰り始めた頃、フィナンシェに『少しだけ時間が欲しい』と
そこは、魔王カティスの
(──もう
「此処で亡くなった方々は
崩落した入口の側には──石を積み上げて造られた簡素な墓標が三つ。
それは、この
「そうだよフィーネ、あいつらのせいであたしたちがどんな目に合わされたと思ってるの!?」
ラウラもトウリも──スティアすらもこんな行為に、悪党にかける情けなんて無いと、フィナンシェを説得しているが彼女は石を積み上げる事を止めようとしなかった。
「あと──このチビいつまであたしのフィーネに引っ付いてんだ!? 作業中なんだから、フィーネから、離れなさい……!!」
(嫌でちゅーー、フィナンシェの身体は絶妙に柔らかくて気持ちが良いんでちゅーー! 此処からはなれたくないでちゅーー!!)
そんなフィナンシェの背中にピッタリと貼り付いたカティスを引き剥がそうと、カティスが纏っている毛布をグイグイとスティアは引っ張っているが、まるで巨大な大木を引っ張っているような強い抵抗を受け苦戦していた。
「くっそ、この、なにこのチビ……!? 抵抗が異常に強いんですけど……!?」
(フッ──
「ふふっ、だめだよスティアちゃん。この子だって疲れてるんだから……わたしの背中が気に入ったのなら、ここで寝かせてあげて……ね?」
「ばぁ〜ぶ、ばぶばぶばぶぶぶ!(約:よく言ったぞフィナンシェよ、特別におれを背中に預けることを許ちゅ!)」
「もう〜〜、フィーネはすぐ甘やかすんだから!」
「後でスティアちゃんもい〜っぱい甘やかしてあげるからね♡」
「…………は〜い♡」
「一瞬でデレた!? あのフィナンシェってやつヤベーぞ!!?」
「なんて恐ろしい
「────っ!! くっ、おれの……負けだ!!」
(あいつらなに勝手に負けてるんでちゅか……??)
──こうして、フィナンシェの側と言う『
それは墓標の数。フィナンシェたちはこの
(
そんな事とはつゆ知らず、墓標を完成させたフィナンシェは──墓標の前に
それは
例え──それが
彷徨える魂に鎮魂の祈りを捧げるフィナンシェの姿は、神の御前に
「──美しい、まるで聖女様のようですわ……///」
「あぁ、おれもなんだか心がぽかぽかしてきたぞ///」
「あのー、ちょっといいッスか……?」
祈りを捧げるフィナンシェの周りの小さな発光体が現れ始める。小さな
(…………驚いた。まさか──
「──ヴァラスさん、オヴェラさん、ラウッカさん。どうか安らかにお眠りください。あなた達の
「あのー、まだ生きてるッスけど……」
「──“祈りを此処に 貴方は姿なき
フィナンシェの鎮魂の言葉と共に──彼女を取り巻いていた小さな光が天へと登っていく。
「じゃあね……クソ野郎ども。しっかりと罪を
「あのー! オイラ、まだ死んでないッスけど……!?」
「「「「「──────っ!!?」」」」」
不意に──声が響く。どこか気が抜けており、どこかだらしなく、どこか気味の悪い声が響く。
明らかに少女の声では無い──小太り気味の男性のような声に全員がビクッと身体を跳ねさせる。
「えっ…………誰?」
そして──全員が、恐る恐る声のする後ろに顔を向けると、そこには──、
「どうも、オイラ──生きてたッス」
──死んだ筈の男が立っていた。
「あ……あぁ──ああ!!」
全員が一斉に口を開く。
「「「「ゴ……ゴ……ゴブリンだーーーー!!!?」」」」
「またナチュラルにゴブリン扱いされてるーーーー!!?」
(あっ、こいつのこと忘れていたでちゅ……)
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