RE:Play Baby ― その赤ちゃん、史上最強の魔王の生まれ変わり。 〜ちゅいまちぇん、世界の片隅で平穏に暮らちたいので冒険に連れ回ちゅのやめてもらっていいでちゅか?〜
第九話:ギルド試験狂騒曲②/戦場に降り注ぐ神の歌声 -Falling_Agape-
第九話:ギルド試験狂騒曲②/戦場に降り注ぐ神の歌声 -Falling_Agape-
「…………ごめんねー、スティアちゃん。まさか、
「しくしく……、あたしもうお嫁にいけない……」
「その時は、わたしがスティアちゃんの事を貰ってあげるからね♪」
「な゛っ、また/// もう、フィーネのバカ///」
そんな──スティアとフィナンシェの意味深なやり取りをは
「なぁ……、あのふたりやっぱデキてんじゃねーの?」
「──しっ、世の中には知らなくて良い事もあるのですわ///」
──と、ヒソヒソと話をしていた。
「……で?
──何があってこうなったのか?
その質問に、スティアとフィナンシェは顔を見合わせる。
「フィーネは──
スティアには、あの
「あたし──実は最後の方、よく憶えてなくて……」
無理もない──長時間、身体を痛めつけられ、挙げ句腹部にナイフを刺されて死にかけた──いや、
スティアが
「ごめんなさい、実はわたしも記憶が曖昧で……」
スティアと同じく、フィナンシェも記憶の欠落があった。
「そっか……、どこまで憶えてる?」
「えーっと、確か……ゲロを吐いた所までは憶えてるんだけど」
「…………へー、ふーん、ゲロ吐いたんだ……フィーネが…………あー、ごめん、あたしの中のフィーネは『清純派ヒロイン』だからさ──ゲロの
(……それ、意味あるんですの?)
「うん、分かった」
(
「えーっと、確か……腕を斬り落とされた所までは憶えてるんだけど」
(
「それゲロの
「あと、恥ずかしいんだけど……ちょっと漏ら──」
「いやぁーーーー、やめてぇえええええ!!」
((そして結局、
スティアがフィナンシェに
「待って…………いったんちゃんと整理しよ? まず、あたしたちは夜明け前に
「ヴェルソア平原を歩いていたら、三人組の調査ギルド──盗賊さんたちに誘われて、平原に見つかった『魔王カティス』さんの
「そこで……、赤ちゃんを見つけて、そして──盗賊たちに襲われて──」
「黒い人形さんに襲われて──」
「で──どうなったんだっけ?」
「──確か、きっと、誰かが助けてくれたような……気が……??」
『──お前たちのその
それに──もっと
「────っと、そうだ。ふたりに聞きたいことがあったんだ」
不意に──トウリが、ふたりに尻尾を振りながら近付いてきた。
「どうしたんですか、トウリさん?」
「いやさ──あっちにいる
その言葉にふたりはハッと顔を見合わせる。
そうだ──私たちはあの
ふたりの欠落していた記憶の
「そうだ、あの赤ちゃんだ……!!」
「あの子は無事なの?」
慌てて辺りをキョロキョロしだすスティアとフィナンシェに、トウリは“仕方ないなぁ”と言う
そして、トウリの指が指し示した先、スティアとフィナンシェの視線の先に──その赤ちゃんはいた。
ふたりが座っていた木陰の向こう、夕日に照らされ
「あっ──あんな所に!」
「行こう! スティアちゃん!!」
赤ちゃんに気付いたふたりは目覚めてからずっと
──何より気掛かりだった。生まれたばかりの小さな
それを、スティアとフィナンシェは、文字通り
──なのに何故、いまの今まで
スティアとフィナンシェは、我が身大事で、小さな
赤ちゃんに気付いてからほんの十秒にも満たない時間。それでもふたりには長く長く、赤ちゃんの元へ永遠に辿り着けないんじゃないか、と思うぐらいに時間が引き伸ばされる感覚を感じていた。
『喜べよ
──頭の中で『誰か』の声が響く。それが誰かは思い出せない、本当にそんな事を言われたのか思い出せない、果たして──それが本当にあった事なのか、自分たちの都合の良い妄想なのかが分からない。
『
──
欠けた記憶にいる『誰か』を、ふたりは無意識に──あの赤ちゃんに重ねようとする。
「──大丈夫だった!?」
赤ちゃんの元に駆けつけたフィナンシェは、駆けた勢いのまま膝を地面に着きながら滑るように赤ちゃんに近寄ると、迷子だった我が子を見つけ出した母親の様に──優しく、でも力強く小さな
「よかった……無事だったんだね……! 本当によかったぁ…………!!」
小さな
「よかった……無事だったんだ……」
嬉しいのはスティアも同じ、でも──だからこそ、スティアは不安に
『だって……あの子、
──自分が
(あたしが……守ってあげなきゃ!)
だからこそ──目の前の赤ちゃんがこれから味わうであろう苦しみと痛みを
「──うぅ、うえ〜〜〜〜ん、え〜〜ん!!」
そんな、スティアとフィナンシェの
「どうしたのー? 怖い思いしたよね? もう大丈夫、もう怖いのはここにはないよ」
「え〜ん、うえ〜〜ん!! え〜〜〜〜ん!!」
泣いている赤ちゃんをフィナンシェは必死にあやしている。
暗い場所に閉じ込められて、盗賊たちにナイフを向けられて、
──泣いて当たり前だ。怖くて当然だ。スティアもフィナンシェも小さな身体で、
ただ、この赤ちゃんの涙──その実態は──、
(※以下、赤ちゃんの泣き声、特別翻訳)
「…………ないでちゅ、ないでちゅ、何処にもないでちゅーーーー!!?(※翻訳中)」
「我が繁栄と恐怖の象徴、千年不毛の地に建つ魔王城──(※翻訳中)」
「我が居城──ヴァルタイちゅト城が…………なくなってるでちゅーーーー!!?(※翻訳中)」
「なんか
「何故でちゅか!? 人間共の焼き討ちにでもあったんでちゅか!!?(※翻訳中)」
「うおぉおおおおお──こんなのあんまりでちゅーー!!(※翻訳中)」
「あの
「希少な鉱石を大量に集めて、来る日も来る日もせっせと石を積んで、時折やって来る人間を返り討ちにちて、やっとの思いで作ったんでちゅよーーーー!!(※翻訳中)」
「なんで
「こんなの理不尽でちゅ!! こんなの不条理でちゅ!! こんなの
──と言う、ただの嘆きの
〜〜〜
「おーよしよし♡ やっと泣き止んだね〜えらいえらい♡」
暫くして、カティスがやっとこさ自分の住んでいた魔王城が崩壊した『現実』を受け止めた頃。
(うぅ……配下の者たちは何をちていたでちゅか……? って言うか、今は
フィナンシェに抱っこをされ、「よしよし」と頭を
「──で、そちらの赤ん坊は……貴女達の……?」
「はい、わたしとスティアちゃんのあか──」
「それは言わないでぇーーーー!?」
「…………なる程、お前らふたりの子どもか」
「トウリさん!? いまの
(エスパーでちゅか!? このイヌ耳は!!?)
「あぁ〜〜〜〜、あたしの尊厳が〜〜〜〜!!」
「ほ〜ら、わたしとスティアちゃんが素敵なパパとママでちゅよー♪」
(どっちがパパかママか知りまちぇんが、片方膝から崩れ落ちまちゅよ……)
「まぁ、どちらの親族かはさておき、
「────っ!!」
それまで──
「待ってください! これには
ラウラとトウリの視線は鋭い。姿勢にこそ現われていないが、その意識、その呼吸は、
(またでちゅか……。やれやれ……たかが瞳が“
『おいおい、冗談じゃねえ……! 瞳に“星”って──
『だって……あの子、
(この時代では眼に紋様が入ってるのは、“呪われた
その瞳は呪われている。そう言った者たちの言葉を
(…………対処ちゅるべき相手はあの二人でちゅね。
そしてカティスは準備する。喉元に白い紋章を浮かび上がらせて、『歌』を奏でる準備を。
かつて──魔王カティスが操った999に及ぶ超常的な
(────『
カティスが歌うは神々の讃美歌。あらゆる者の思考を
「────Laaaaaaa──!!」
「なんですの急にぃ……………………」
「なんだ!? いっ……たい………………」
カティスから発せられた美しき天上の調べは、臨戦態勢をとっていたラウラとトウリの
「………………」
「………………」
「何が起こったの…………?」
「この子が声を上げたら……ラウラさんもトウリさんも動かなくなっちゃった……?」
(ふいー、こんなもんでちゅね。暫ちしたら二人とも意識を取り戻して、冷静に
ラウラとトウリを無力化した事に満足したカティスだったが、それと同時に──、
(しかし──やっぱり『
──生前の自身の超常的な力が全て引き継がれてしまっていることをしみじみと実感するのであった。
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