第12話 悔恨の刃

「それでどう責めるんだ?敵が隠れている以上、迂闊に突出も出来ねぇよ」

「歩夢さんは周辺警戒を、由貴さんは索敵を、俺は由貴さんを援護する。で、どうでしょうか?」

性格や現在の状況を考えるとこれが最適とは思うけど…。

「異議なし!」

「はい、大丈夫です」

「ふむ、これは中々予想外かもね」

3人の様子を観測しながらヘカテは静かに空を見上げる。それは誰かに語りかけるようでもあった。

「敵はいたか2人とも?」

「さっきから探しているんだけどこっちはダメ。由貴さんは?」

「全然ダメ本当にいるのか疑わしいんだけど」全くだ。先程から血眼で探しているけど見つからない。「そういえば由貴、操作に少しは慣れたんじゃないのか?」

「基本操作は何とか出来るだけよ。いざ、実戦となれば活躍出来ないのが自分でもよく分かる…」

「気にすんなよ。俺だって上手く操作出来てるか分かんねぇだから、みんな最初はそんなもんだろ。俺でいいなら、時間空いた時に訓練付き合うぜ」

「俺も忘れないでよ」

「2人が仲間で本当に良かった…ありがとう」

それは俺も同じだ。成り行きでここまで来たけど…ナジェとの出会いは戸惑いしか無かったけど、こうして2人に出会えて俺は今、楽しいと感じている。例えこの先、苦難が待っていても乗り越えてみせる。

「いた!14時の方向!」

由貴さんの声を合図に俺も歩夢さんも自然と臨戦体制に入る

「あそこか。俺が正面から切り込む。潤は右から、由貴は左から回り込んでくれ!」

「「了解!」」

自然と由貴さんと俺の声が重なる。俺達の接近に気付いた敵が、一旦距離を離そうとするが

「おせぇ!」

その瞬間に距離を詰めていた、歩夢さんの刃が敵を貫く。

「今だ、やれ!2人とも」

刹那、俺の刃は敵を貫いた。が、由貴の刃は届かなかった。間に合わなかった訳ではない。武器を振るう位置が数ミリ敵より手前だった為、その刃は空を虚しく切った。

「ごめん…」

か細い、その声は耳を澄ましていなければ聞こえないほどだった。

「気にすんな。最初はみんなこんなもんだろ」

「お疲れ様。敵の沈黙を確認、シミュレーションはこれにて終了するよ」

ヘカテさんの声と共に、戦闘シミュレーションは終わりを迎えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る