華月堂物語~其之四『諸国怨嗟詩』 ~

真琴

序 とごいし宿命

 自分の宿命を、呪っていた。


 己の意志など、無意味。大儀のために生きよ。そう言われ続けた。

 言われるままに学び、鍛錬した。

 そうするより、己の生きる道を与えられなかった。


 己が何者かなど、わからない。わからないのが歯痒いまま日々は過ぎゆく。にもかかわらず、周囲からは名を与えられた。

 神童、秀才、逸材――それは、仮の名。本当の名ではない。

 誰も、私を本当の名では呼ばない。


 面白きことはなにもなく、面白きように生きる術も見つけられず。

 妬まれ、恨まれ。

 ひとりぼっちだった。


 言われた通りに生きてきた。ただ、それだけなのに。なぜ。


 この身は常に光の当たる場所を歩いているのに、心は出口のない闇に閉じ込められている。


 呪った。

 生きることを。

 世界の、仕組みを。

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