株式取引の備忘録(投資は自己責任で)

第22話 五年・十年保有しないかぎりPERやPBRに意味はない

五年・十年保有しないかぎりPERやPBRに意味はない

　株式取引を始めたい皆様は、できればすぐにでも儲けたいですよね。

　それこそ資本が増えるのに五年や十年も待っていられるほど余裕のある方は少ない。

　今儲けたいから株式取引をしたいんだ。

　そういう方は経営の健全さを示す指標であるPERやPBRは無視してかまいません。

　コロナショックで暴落した株価は、PERやPBRでは想定できない下げ方をしましたし、そこからの急騰もPERやPBRでは説明がつきません。

　PERやPBRが割高・割安の指標として威力を発揮するのは、長期にわたって波乱のない上昇トレンドが続いているときだけです。直近ではアベノミクス相場が当たります。

　9.11同時多発テロやリーマンショック、東日本大震災、今回のコロナショックのような突発的な暴落においてPERやPBRはまったく役に立たず、長期保有していた「株式」で大きな含み損を抱えた方も多かったのではないでしょうか。

　PERやPBRから株価の割高・割安を調べ、売上高よりも株価が割安なうちに「株式」を購入して、五年・十年のスパンで保有する。この判断をするために用いる「ファンダメンタル分析」と呼ばれる手法があります。

　「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイも基本的に「ファンダメンタル分析」で将来性を見越して投資銘柄を定めているのです。

　大量に買い付けては長期保有して株価が数倍・数十倍になってから売却して大きな利益を生み出しました。

　では我々はバフェット氏やバークシャー・ハザウェイのように五年・十年「売上高の割にPERやPBRが割安な株式」を握っていれば億万長者になれるのでしょうか。

　結果からお知らせしましょう。

　億万長者になる可能性はかぎりなく低いのです。

　そもそもあなたの買った株式が長期保有していれば十倍・百倍まで株価が上昇する可能性はきわめて少ない。

　ではなぜバフェット氏やバークシャー・ハザウェイが毎年何千億円と稼ぎ出せるのでしょうか。

　お金持ちだからです。

　お金持ちなら割安株で将来性がありそうな銘柄をすべて購入するだけの余裕があります。

　十銘柄を買ってそのうち一銘柄だけが百倍に化ければ、トータルで大儲けができて当たり前ですよね。

　しかも何百、何千という銘柄を買っていますから、毎年いずれかの銘柄を決済すれば、利益が出せるのです。

　十年寝かせるとすれば最低でも十銘柄を扱っていないと、毎年利益確定できません。

　つまり、株式投資で大金を手に入れるには、大金を持っているにかぎります。

　もし大金を持っていなければ、長期投資は選択肢から外すべきです。

　だから誰もが労せずテンバガーを目指そうとし、確実に十倍株になる銘柄を見つけ出そうと必死になります。

　お金が働かないかぎり利鞘を稼ぐ手段はありません。お金の流動性がなくなれば、手をつけられない資金が増えるだけです。

　買った銘柄が十倍になるまで待っていられるほどの余裕はありますか。

　PERやPBRで割安株を見つける「ファンダメンタル分析」は、元から金持ちな人だけがとりうる戦術なのです。

　あなたもほかの手段である程度の資金を手に入れてから、五年・十年動かさない塩漬け株で株価十倍・百倍を目指すようにしてください。

　資金もないのにテンバガーを目指すのは、投資ではなく単なるギャンブルです。

　低PER・高収益で割安な銘柄がそのままの水準で五年・十年経つこともざらにありますし、最悪倒産して株式が紙くずと化す可能性すらあります。

　つまり金持ちと同じテクニックでは、貧乏人は同じ結果が出せないのです。

　では貧乏人は株式投資でお金を稼げないのでしょうか。

　株式投資では稼げませんが、株式トレードなら稼げる可能性はあります。

　経営の健全さを基準にした「ファンダメンタル分析」はいっさい行なわず、「テクニカル分析」に注力してください。

　長期保有ではなく、数日から数週間がスパンの「スイングトレード」を基本にするべきです。

　単に「金持ちトレーダーといえばデイトレーダーだよな」と思って「日計り取引」に乗り出してはなりません。

　「デイトレード」は市場が開いている間中、PCに張り付いていなければならず、本業の片手間である副業にできないのです。

　本業をお持ちの方は、もれなく「スイングトレード」を目指すべきなのです。

　「スイングトレード」ならスマートフォンでもじゅうぶんに戦えますよ。