第4話皆さん人間じゃ無いですよね?

米の食感悪いし甘みが無いしふんわりとした焚き加減じゃない…、干し魚は干物とも違いしょっぱいだけで美味しくない…、みそ汁もしょっぱい…、そして何よりおかずとご飯の比率がおかしい…。

でもお腹は減っているから食べるけど、塩分過多で近いうちに倒れそうな塩分量、そしてやっぱり米の量が多い!

心の中で不満を羅列しながら食事を続けると、不満が顔に出ていたのか、「お口に合わなかったでしょうか?」と心配そうな表情で言われてしまった。


まあ実際お口には合わないんですが、女の子に心配そうな顔をされたら笑顔で大丈夫ですって言ってしまうよね。

そして茶碗に山ほど盛られた米を半分ほど食べ、汁物とおかずを平らげ米を残した事をお詫びし、出されたお茶を飲んでいると、ドスドスと明らかに大股に歩く足音が廊下の方から聞こえ部屋の前で止まるり「失礼いたします」と声が聞こえた直後、障子が開き、やっぱりおでこに2つ角の生えた男の人が入って来た。

やっぱり角がある…。

でもこの人の角、照さんよりも少し大きい。


「お目覚めになられた事、お喜び申し上げます。 某、この豊嶋家当主、豊嶋勘解由左衛門尉泰経でございます。 此度はご加勢を頂き誠にありがとうございます。 今後とも当家をお引き立てのほどよろしくお願い申し上げます」


そう言い平伏する30代後半ぐらいの男性、豊嶋勘解由左衛門尉泰経、多分、豊嶋が姓で勘解由左衛門尉が官位名で泰経が名だろうから泰経さんと呼ぶことにして、先程食事をしながら思った疑問をぶつけてみる。


「あの~、現状が理解出来てないので、質問していいですか?」

「はっ、某にお答え出来る事であれば何なりと」


「泰経さんや照さんは人間? それとも別の種族? それに初めて会った時、(天より我らを助ける為に)とか言ってたけどあれは何? あと今西暦何年? そして合戦は終わったのに何故に鎧は着て無いものの軍装を解いてないの?」


一回に投げかける質問が多すぎたかなと思ったけど、頭に浮かんだ疑問をぶつけると泰経さんは、顔を上げ丁寧に説明をしてくれた。


泰経さんも少し説明に困って居たけど、どうやら皆さん、人間ではなく鬼人と言うらしい。

と言うよりも人間と言う言葉すら聞いた事も無いみたいだ。

人間居ないんかい!!!!


そしてこの世界で言う人とは、鬼人の事を言うらしい…。

角について詳しく話を聞いてみると一応、角の無い血統の人も居るには居るらしいけど、この日ノ本では皇族の男姓だけらしい。

ただ泰経さんも、なぜ皇族の男姓だけに角が無いのかは知らないらしく、恐らく皇族男性特有のものとの事だった。

ただ、不思議なことに、皇族の男児であっても、親の皇位が下がるとその子供には角が生えるらしく、角が生えた子供は皇族としての地位は失うとの事。

よく分からんシステムだ!!!

ただ一つだけハッキリしてる事がある。 それは自分が皇族ではない事!!!!

なぜならこの世界の人では無いから!!

もともと角は生えて無いし!


いや、おでこに角が生えてるだけで他は人間と変わらないんだけどさ一応ここって異世界な訳だからドワーフとかエルフとか魔人とか居ないの?

いやむしろ異世界のテンプレは剣と魔法の世界でしょ?

それが刀と槍、そして弓の世界で魔物も居ないってどういう事よ!!


えっ? なに? 魔法とは呼ばないものの妖術ってのを使える人は居るって?

何十年と修行を積んだ修験者とか修験者とか修験者とかは手から火を出したり水を出したりと…。

そして天性の素質を持つ巫女さんが天候を占ったり出来るんだって…。

いやもうそれ役に立たないの決定じゃん!!

そもそもそれホント? 何かネタがあるでしょ!!!

異世界のイメージ崩れるわ~。

もう異世界召喚じゃなくてタイムスリップで良くない?


尚、初めて会った際に言われた言葉についての回答は、弟の泰明さんが城主を務める練馬城の城下に敵兵が押し寄せて放火されたとの報告を受け、各地に陣触れを出した夜、泰経さんや一門衆の人達の夢に神々しいご老人が現れ、(此度の戦は本来なら負け戦になるが、異なる世界の先の世から日ノ本を統べる者が現れるだろう)と言う予知夢的なモノを見たとの事だった。

実際に戦は苦戦だったうえ敵の別動隊が現れた事で挟撃されそうになり敗色が濃くなった所に、自分が降臨し別動隊を撃退した事で、敵軍に動揺し裏崩うらくずれれが起き勝てたらしい。


自分では全く気付かなかったけど、はた目には地上に赤い一条の光が差し込み、巨馬に跨った自分が現れたらしく、後方で指揮を執っていた泰経さんや一門衆、そして家臣達がはっきりと目撃し夢がお告げだったと確信し、その後、深紅の見慣れない鎧を着て大太刀を軽々と振るい足軽雑兵、武者問わず斬り捨てていく姿を見て自分に従うと決めたらしい。


「それにしてもお一人で敵兵517名の首級を上げられるとは、まさに天から遣わされた日ノ本を統べるお方、奇抜ではありますが鎧も、そして馬も素晴らしく」

「えっ…、あれはやっぱり現実で生きていた人だったの?」


「はい、道灌めの足軽衆でございます」

夢と思い容赦なく人を斬りまくった事が現実だったと薄々気が付いてはいたものの現実逃避をしていたけど事実を突き付けられると嫌悪感が沸き上がり先程食べた食事が胃からこみあげて来る感覚がする。

何とかこみあげる物を抑え、先を促すと、西暦と言うものは分からないが、今は文明9年との事だった。 文明何年とか言われても知らんよ!!


そして軍装を解いていない理由は、再度領内各地に陣触れを発し、兵のが集結を待ち、この勢いのまま明後日には道灌が居るであろう江戸城を攻めるとの事だった。



補足------------

※補足

室町時代初期のお米は主に現在食べられている白米をではなく、赤米、黒米を主に食べていたそうです。

ただ一部上流階級の人が白米を食べる事もあったそうですが、精米の手間などがあり庶民が食べる事は少なかったそうです。


裏崩れ

戦場で、前方の部隊が敗れたため、後方の部隊が戦う前に崩れ乱れ敗走を始めてしまう事。

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