第42話 ガレスちゃんと幽霊屋敷6

ルフェイという人物に関してはよくわからないという印象が強い。俺とモードレットがパーティーを組んで少し活動をし始めた時に声をかけてきたのだ。彼女は俺には興味がなく、モードレットにやたらと絡んでいた。

 特出したものなく、ユニークスキルも冒険者向けではない彼女をパーティーにいれるのをモードレットは渋い顔をしていたけれど、あまりにしつこかったのでそこまでいうならといった感じで組んだのである。そして、その後にザインが参加して俺達のパーティーは完成した。そして……パーティーを組んでいたという事は彼女のスキルの構成も俺は知っているのだ。



「セインさんこの人は……?」

「俺の元パーティーメンバーのルフェイだ。魔術師だよ」

「久しぶりね、セイン。噂は聞いているわよ。ずいぶんうまくやってるじゃないの」

「ああ、お前らに追放されたおかげでな。それよりもルフェイ……最近のアンデット達の騒ぎはお前の仕業だな。何を考えている!?」

「あらあら、何のことかしらね……何て言っても無駄よね。あなたは私のユニークスキル『死者へのささやき』を知っているものね」



 ルフェイは楽しそうに笑いながら言う。彼女のスキル『死者へのささやき』はその名の通り、アンデット系に命令するスキルである。アンデット達はリッチのような例外を除き、生者への逆恨みか、死んだときの未練を原動力として存在しており普通は意思疎通はできないのだが、彼女のスキルを使えば別だ。彼女はアンデットに囁いて、彼らを操り、そそのかすことができる。そして……彼女のスキルを強化するために俺は、彼女に『死霊魔術』のスキルを売っている。使いようによっては死体をアンデット系のモンスターにしたり、アンデットを強化したりできるのだ。



「セイン、あなたのおかげで、私のスキルはとても便利になったのよ。本当は彼ももっと強力なアンデットにしてあげたかったんだけど時間切れみたいね。ほら、あの二人を殺せばあなたの娘にあわせてあげるわよ」

『Uuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!!』



 その言葉と共にレイスが叫び声をあげて襲ってきた。いや、レイスだけではない。屋敷のあちらこちらからゾンビ達が現れ迫ってくる。数は八体くらいか……まあ、やれなくはないな。俺は剣に聖水をふりまいて相手を退治しようとするが……



「アンデットにはそれが定石よね、でも、対策を練っていないと思ったの? 雷よ」

「うおおおおおお!?」



 ルフェイの杖が光ったかと思うと雷が俺の剣に向けてやってくる。聖水によって電気が通りやすくなって剣を俺はとっさに手放した。まばゆい光と共に剣が雷の直撃をうけてふっとぶ。彼女の放つ雷は本来ならそこまでの威力は無いが、こうなっていると話は別である。得物を失った俺だったが、近づいてきたゾンビに蹴りをかます。



「なめるなよ!! ガレスちゃん聖水はレイスを倒すときだけに使うぞ」



 俺の蹴りで腐っているため脆くなっているゾンビの頭がふきとぶ。追放された後にザインに襲われた時に買った『初級格闘術』が役に立ってよかった。とはいえ油断している余裕はない。ガレスちゃんの方を見ると彼女の槍の一撃で一瞬にして貫かれたゾンビが浄化していった。



「やっぱり……」

「あらあら、聖水を使っちゃったのかしらね。喰らいなさい。雷よ」

「ガレスちゃん!!」



 俺は近くに落ちている石を投げてルフェイの魔術を阻止しようとするが、間に合わない。ルフェイの放った魔術がガレスちゃんの槍に当たる。



「くぅっ」



 ガレスちゃんは痛みに顔をしかめるが、強い意思をもって槍からは手を離さない。そして、俺は気づく。彼女の槍は濡れていない。聖水なしでどうやって浄化を……? 別にスケルトンやゾンビは倒すことは聖水を使わなくてもできる。だけど先ほどのガレスちゃんの様に浄化をすることは不可能だ。




「そうか、『清浄なる白い手』の力か!!」



 手で触れたものを浄化するスキル。その力はこれまで鮮度の悪い材料を浄化することにばかり使われていた。だから魚や肉などをさばいたときに浄化されて新鮮になりガレスちゃんの料理は美味しかったのだ。そしてそれはアンデットも対象だったようだ。




「セインさん、私はまだ大丈夫です!!」

「ふーん、聖女の亜種かしら、この女……さすがに相性が悪いわね……制御しにくくなるから使いたくはなかったけどしかたないわね」

『Uuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!!』




 そういって彼女が指を鳴らすと、一体のスケルトンがレイスの元へ近づきそして、不気味な声と同時に一体化した。



「人為的なリッチよ。そうね……デミリッチとでも言わせてもらおうかしら。ねえ、あの二人に見覚えはないかしら? あの二人があなたたちに伝染病をうつしたのよ? そのせいであなたの娘は理不尽に死んだのに、あいつらは生きているのかしら? ひどい話だと思わない?」

『あああ、ロザリーロザリーロザリーィィィィィィ!!!!』



 ルフェイの言葉によって、そいつは狂ったように叫びだした。もちろん伝染病を俺達がうつしたはずがないのだが、憎しみにとらわれている彼にはスキルを持つルフェイの言葉以外は届かない。たたかうしかないのだろう。

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