第69話 書店でのサプライズ その2

書店の奥に行くと、小高い本の山ができていた。


「すごい!こんなに登頂が簡単そうな山は初めてっしょ!」


シータは本の山に足をかけた。

「うーん…」


その時、山の下からうめき声が聞こえた。そうか!人が本の下敷きになってるのか!


「シータ!この下に宝がある!掘り返そう!」


「マジで!今行く!」


なんとかシータを寸前のところで静止させることが出来た。


バサ!バサ!


二人で豪快に本の山をどかしていく。


「ありがとう。助かったよ。」

本の山に埋もれていた背の低い男は、立ち上がり一礼をした。


「怪我してないか?」

俺は、男についた埃を払ってあげた。もさっとした茂みのような髪のため、かなりの埃が落ちた。


「大丈夫だケニー。それより、うちに探し物をしにきたんだろ?」

少し弱気な声だが、心配ない。

彼、ゴードンにとってはこれが平常運転だから。


「新品の『冒険の書』を探している。彼女にプレゼントしたいんだ。」


「『冒険の書』!ちょうど良かった。父さんにたのまれてたんだよ!」


実を言うと、ゴードンの父はあのトーマスさんなのだ。さっき会った時に、小さくこの話をしておいたから、話をつけてくれたんだろう。


「うちにあるのは黄色までだね。それが2000万ゴルシだけど、購入する?」


「もちろん。一番質の良い物が欲しいからな。」

俺は鞄から2000万ゴルシを取り出した。

札束とはいえ結構重い。


「ケニー、あたしこれがいい!」

会計を済まそうとした時、シータが『青の冒険の書』を持ってきた。


「それはおすすめしないな。一番性能が悪いから、後で買い替えることになるかもよ。」


「やだ!やだ!アタシこれがいい!」

シータは子供のようにだだをこねた。


「…分かったよ。ゴードンごめん。こっちの青の方にしてくれないか?」

みかねた俺は、シータが欲しがった本を選ぶ事にした。


「いいよ。この本なら300万ゴルシだね。」


俺はゴードンに300万ゴルシを渡した。


「ま、また来てね。」

ゴードンは恥ずかしそうに手を振っていた。


俺達は、そんな彼に手を振りながら店を出た。

「シータ。それで良かったのか?」


「うん。だって、『冒険の書』が弱くても大丈夫だからね。ケニーと一緒ならアタシ、どこまでも強くなれるし!」

シータは買ってもらった冒険の書を大事そうに抱えていた。


「そうか、それなら良かったよ。」


路地に差し込む夕日の中、二つの影が伸びていた。

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