第65話 アドラメレルの思惑 後編

「そうか。俺がダンジョンの外でも攻撃魔法を使えるから、悪魔は俺を狙ったのか。」


「そういう事になるな。」

ジェームズはうなづいた。


「魔法を外で使えるようになれば非常に強いしねー。捕まってたら危ない所だったかも。」

ジェニファーは、紅茶を一口飲んだ。平然を装うとしているが、手が震えているのがよくわかる。


「そう震えんなって。悪魔アドラメレルはもう倒したし、怯える必要はねえよ。」

ジェームズは彼女の震えている手を握った。


「うん…そうだねー。」

手の震えはすぐに止まった。


「今度はジェニファーの質問に答えるぜ。2人とも『冒険の書』に色分けによるランクがあるのは知ってるよな?」


「強い順に黒、金、銀、赤、黄、緑、青の順だよな。確か黒と青で比較すると10倍くらい性能が違うという事を聞いたな。」


「その通りだぜ。だから、アドラメレルにはどうしても黒の『冒険の書』を手に入れる必要があった。だから、ジェニファーの所有している物を狙ったって訳だ。」


「それはちょっとおかしいと思うなー。この大陸に限っても他に黒の『冒険の書』を持ってる人はいるし、わざわざ3000kmも離れた私の本を狙う必要があるのかなーってね。」

ジェニファーは首を傾げた。


「逆だぜ。3000kmも離れてたから狙われたんだ。それだけ離れていれば魔法の痕跡を残すのは不可能だし、どっから打ったのかも分からなくなる。ここからは俺の考察になるが、恐らくアドラメレルは超遠距離で『冒険の書』を捨てさせる魔法を放ち、ジェニファーに当てた。そうして、ケニーをオトナリの街に送り出し、『冒険の書』を手に入れさせた。これなら説明つくだろ。」


「見事ねー。それなら説明がつくね。」

「…ところでジェームズ。どうして、悪魔や魔法の事に詳しいのかしら?保安官の務めとはこたえさせないよー。」


「コホン」

ジェームズは軽く咳払いした。


「実は俺も、アルフ一族の末裔でさ。住んでた場所が悪魔に襲われて、生き残ったのは俺1人だけだった。」


ジェームズの表情が曇る。


「だから、これ以上悪魔の被害を出さない為に、勉強してたって訳よ。見事に役立ったろ?」


「役立ってるよ。ジェームズがいなかったら俺はここにはいないし。」

「だから、俺もジェームズに協力したい。」

俺はジェームズを真っ直ぐ見つめた。


「そんな見つめられても、恥ずかしいだろ!」

ジェームズは頬を赤、少し笑った。

「そうだな。また、動きがあったら、頼むとするぜ。」


「よろしくな。」

俺達は拳を合わせた。


「まー色々と謎もわかった訳だしお茶会再会しよー」


「おう」


「そうだな。」


久々に感じる温かいひだまり。

その日の午後は緩やかに時間が過ぎていった。

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