第64話 アドラメレルの思惑 前編

「それじゃ、説明するか!」

「あいつのやりたかった事はただ一つ。ケニーに最強の『冒険の書』を持たせる必要があったんだよ。」


「なるほど、冒険者の強さは冒険の書によって左右されるからねー。魔王の戦力にするため、とにかく強くしたかったのだろうね。」


「ええと、要はその「冒険の書」が見つかるまで、放置されてたということか?」

俺自身、ジェームズとジェニファーの話についていけてない。発される言葉を少しづつ噛み合わせていく事にした。


「放置というか、ある程度の年齢になるまで育てられただけだな。悪魔的視点で考えるとそうなるぜ。」


ジェームズはやたらと悪魔に詳しい。ただの保安官のはずなのに、何か別の顔があるのだろうか?


「まとめると、こうだ。」


物心つく前のケニーを誘拐

→ある程度まで育てる。

→強い『冒険の書』を手に入れさせる。

→悪魔にする


「これがアドラメレルの組んだプロセスだと思う。理にかなってるだろ?」


「待って。『冒険の書』を手に入れさせるって言ったけど、私がね、うっかり道端に捨ててしまっただけなんだよねー。そんな偶然があるとは考えづらいよー。」

反論するジェニファー。確かにそうだ。


「俺からも疑問がある。ジェニファーの持つ『冒険の書』を使いたかったのなら、もっと近くの誰かを悪魔に仕立て上げた方が良かったんじゃないかな?アドラメレルが俺を選んだ理由が分からない。」


「ちょっと説明不足だったな。時系列的にケニーの質問から答えるぜ。」

「アドラメレルがあんたを選んだ理由。それはあんたがだからだ。


「俺が…特別?」


「この前の宴の時、ダンジョンの外で攻撃魔法を使っただろ?」


「ああ。あれはとても驚いたよ。こんなことあるんだなって。」


「それが特別な力なんだ。普通の人はダンジョンの中でしか攻撃魔法を使用できない。それが出来るのは、遥か昔に『冒険の書』を作ったとされる『アルフ一族』だけだ。」

「ケニー。よく聞け。あんたはその末裔だ。」


あまりの衝撃に、一瞬言葉を失った。

俺が、『冒険の書』を作った一族の末裔?!

まるで、夢のような話だ。

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