word47 「黒いパソコン お隣さんから」①
「未発見 深海生物 1番気持ち悪い」を検索した僕はしばらくその場から動くことができなかった。
深海魚が泳ぎだして手を振るお隣さんの姿が見えなくなるまで、ずっとその様子から目が離せなかった。
そして、次の瞬間――ベッドにダイブ――。
「ああああああああああ!」
枕に向かって叫んだ。
一体何が起こったのだ――。あれは何だった――。え、さっきのは夢か――。今は現実じゃないのか――。どうしてこうなった、どこで間違ったんだろう……僕の人生は――。
気持ちの整理がつかない僕は一旦大袈裟に取り乱した。
頭の中で思いつく限りの疑問を吐き出してスッキリすることによって、落ち着きを得ようとしたのだ。
「はあ……はあ……」
その数分後、ベッドからでた僕は、少し息を切らしていた。ちょうど1発抜いたくらいの疲労感がある。
そして、できればこのまま見なかったことにしたいけれどそういう訳にもいかない事態なので、問題と向き合うために黒いパソコンの前に座り直した。
向き合う問題はもちろん、なぜ先ほどの検索結果にお隣さんの姿があったかということである。
昔から僕の家の隣に住んでいた変人であり、黒いパソコンによって正体が宇宙人であると発覚したお隣さん。
彼が……あの場にいた理由、深海魚に手を振っていた訳、生身で深海に潜れる身体能力。お隣さんに関することだけでも気になるところはいくつもある。
けれど、何より気になるのがやはり……黒いパソコンとお隣さんとの間に何かしらの繋がりを感じた点である。
黒いパソコンは僕の意思を汲んで結果を表示する。つまり、僕が望んでないものは表示しないはず。
今日、Enterキーを押すときにお隣さんが出てこないでほしいなんてまさか考えていなかったが、あんな驚愕映像を見たくないことはこいつなら分かっていたはずだ。
それに、黒いパソコンの動画検索は既存の映像しか見れないなんて低級なものではない。
もしも、どこかで誰かが撮影した映像だとか監視カメラに映っていたものしか表示できない代物であるなら、こう考えられる――。
最も気持ち悪い深海魚を撮影したことがあるのが、地球人よりも高度な文明を持つ宇宙人であるお隣さんと、その仲間しかいない。ゆえにあんな風に手を振るお隣さんが映り込むものしか表示する結果が無かったのだと。
しかし、黒いパソコンはいつどこの瞬間でも切り取って映像にすることができるのだ。これは過去の検索で確認済みの事実。前には恐竜の捕食シーンだって見たことがあるのだから、間違いない。
わざわざ別の生物が映っているものを見せるのはおかしいのだ。さすがの僕もムーディに右から左に受け流したりなんてできない事案である。
単なる黒いパソコンのきまぐれか、たまにあるいじわるか。そんなこと考えたことは無かったけれど、もし撮影されていた映像があれば、超科学的な異次元の撮影よりも優先されて表示されるのか。黒いパソコンとお隣さんを切り離せる推理もいくつかある。
けれど、どうしても黒いパソコンとお隣さんに繋がりがあるほうへ考えが引っ張られてしまうのは……人類にとって未知のものがすごく近くにあるからか……。
前々からうっすら考えていたけれど、直視していなかったことだ。とんでもない物がいきなり僕の部屋に現れたこと。とんでもない人間が隣に住んでいたこと。この2つが単なる偶然で片付けられるだろうか……。
2つを関連付けて、とんでもない物はとんでもない人間の所有物だというような推論が生まれるのは自然のことではないだろうか……。
もしも……もしもこの黒いパソコンがお隣さんから届けられた物だたっとしたら……。
そう、黒いパソコンとお隣さんとの繋がりは前から感じていたことなのだ。それが今日より強くはっきりとしただけ。
考えるとぞっとする――。怖い――。
しかし、先ほどお隣さんが手を振っていた対象が……深海魚ではなく、画面の向こうにいる僕だと思えてならない……。
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