番外編5 「幼なじみ 死姦」③
早朝、点けっぱなしで眠ってしまったパソコンの電源ボタンを押す――。
酒を飲んで自慰の後は何もしたくなくなってしまって、そのまま寝る。朝のこの行動はいつものことになっていた。直そうと思っているのだけど、どうにもならない。
しかし、この日はパソコンの電源ボタンを押しても光が消えなかった。目をほぼ閉じたまま、何度か押してみても消えてくれない。
どういう問題が起こっているのかと隣のパソコンを見る――。すると、そこには自分の物ではないパソコンがあった――。
見慣れないそのパソコンの色は、全身が黒色。画面の背景もマウスも。キーボードに書かれた文字だけが白色だった。そんなパソコンが俺のパソコンに重なる形で置いてあった。
俺は驚いて体を起こした。自分の知らない物が自分の部屋にあるということが、他人の不法侵入を意味することにはすぐに辿り着いたのだ。
俺が寝ている間に誰かが勝手に入ってきて……パソコンを置いていったということか……そういうことになるよな……一体何故……考えたって類似するケースを耳にしたことが無いので、意味が分からない。
周囲を警戒しながら、恐る恐るパソコンに触れた。まずそれが本当にただのパソコンなのかを調べる為である。
もしかしたら、爆弾かもしれない……そう思ったが、どっからどう見てもただのパソコンの形をしている。触れてみた感じも自分のノートパソコンと変わらない、さっき寝ながら電源ボタンを押した時も……反応はしなかったもののちゃんと押し込めるボタンだった。
マウスも動かしてみれば、画面上でカーソルが動いた……しかし、不気味なのは、パスワード入力画面っぽいそこに、カーソルとワードボックス1つしかないことだった。普通はユーザーネームとか、下の方に設定や電源のマークとかがあるものなのだが……。
じゃあ、適当にパスワードを入力したらどうなるだろう。寝起きの俺はまだ思考が浅くて、特に何も考えずにキーボードを打った。なんとなく自分のパソコンのパスワードを入れてみたのだ。
「パスワードが違います。」、そう表示されて、手がかりが得られないまま別のアプローチで謎の黒いパソコンが現れた理由を探すことになる――そう思っていた――。
しかし、黒いパソコンが表示した文は……。
「この文字列はあなたのパソコンのログインパスワードです。」
より不気味さを増すものだった――。
俺はそのパソコンが何でも検索できる代物で、おそらくはデメリットが無いということを理解し、それを信じることに10日間ほどの時間を要した。
いくら何でも現実離れしすぎている。夢ではないということを時間が経っても信じられない。これを1人の人間が使うなんて許されるはずがない。
俺は疑った。一体どんな罠が張られているか。どういった可能性があるかを10日考え続けた。
けれど、最終的には信じることにした。
怖いからと言ってどうすることもできないからだ。性能を知ってしまった以上、もう黒いパソコンを捨てようだとか壊そうだなんて考えられない。信じないという選択が余りにも有り得なかったから信じるしかなかった。
こんなチートアイテムを自ら手放すなんて、できなかった。
――俺は完全にやることが無くなった夏季休暇中に、黒いパソコンを使ってあらゆることを検索した。今はほぼニートとはいえ医学生、勉強をすることは好きだった。何かを知るというのは楽しかった。
今まで疑問に思ったことがあることの答えを全部、黒いパソコンは教えてくれた。宇宙の全貌も、空白の歴史も、誰も解明できない難病の治療法すらも、数秒で答えが表示された。
公に発表すればノーベル賞は間違いない情報の数々。自分で見つけたことにすれば、俺が世界で1番の有名人にだってなれる。
一体これからの人類の何千年分の知識量か分からない。知っていく度に、俺の世界が広がった。いつしか、自分がこの世の神にでもなったのかと錯覚するほど……心が広く、透明に……。
その一方で……いや、だからというべきか……性に対する欲望はより強く、よりアブノーマルになっていった。
画像検索や動画検索の存在を知り、色んな死体や、実際の死姦を見た日もあった。正確に言うと屍姦、女の死体に覆いかぶさり腰を振る男の映像。いくつも見ていくうちに、俺はより刺激の強いものを求めるようになった。
あらゆることを知った脳では、ちょっとしたことでは興奮できなくなってしまったというところだろうか。傷が多いのは苦手だったのだけど、いつしか首が切れていて、その断面が鮮明に見えている画像すらグロテスクに見えなくなった。もっと……もっと……そう求めてしまうように気付けばなっていた。
そうなってしまった俺が、最終的に辿り着いたのは実際にそれをやることだった――。
もうどんなに好みのものでも、画像や動画を見ているだけでは満足できない。実際にやって、これ以上ないほどの快感を肌で味わってみたい。性欲が高まると、そう思うようになった――。
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