第55話 (2010年2月16日)ホワイトデー
2月16日
今年も嫌な季節がきた。
確定申告をしなければならない。
2009年はUIG株やタウングループ株の売却で55億2750万円の利益が出ている。
今年から20%の税率になるので、納税額は大体11億600万円ほどになる。
・・・11億も取られるのはやばい。去年までの税率が如何に天国だったかを自覚する。
今後もほんの少しだが税金が増える。まあ、これは復興のためだからしょうがないが。
納税のために2009年2月に購入したりんご株2.3万株とネットフレックス株8万株をそれぞれ、4億2100万円と4億7000万円で売却する羽目になった。
購入した時よりほぼ倍に増えているので納得することにする。
元々証券口座に残しておいた2億と合わせても足りず、銀行口座から1500万円を出すことになった。
昨年8月に5200万と少し入っていた銀行口座は、デート代やプレゼントで600万ほど減っていて、今回の分もあり、3100万まで減ってしまった。
まあ、まだ8月に購入した株はりんご株が20万株、ディー・エヌ・ベー株が1万株残っている。
その2社の株式、合わせて購入時点で約60億円だ。10歩前進して1歩戻った感じだな。
「渚もうまくできた?」
「できたよ〜!納税用にお金も置いておいたし、パパに手伝ってもらったから〜」
「さっすが渚、なんでもできるね」
「でしょ〜、て言っても取引は2回しかしてないから簡単だったけどね〜」
「それでもすごいよ。もう結構投資のことも覚えてきたしね」
「ま〜ね〜!でさ〜、2O2Oの株ってまだ持っててもいいと思うんだけど、どう思う〜?
第三四半期の決算短信も悪くなかったし、業績予想も上り調子みたいだから〜」
「うん、決算をみる限りまだ持ってていいと思うよ」
少なくとも1年は大丈夫なはずだ。
「そっか〜!じゃあ、もうちょっと持っとこうかな〜!でも他にも欲しいの沢山あるんだよね〜!」
「投資に焦りは禁物だから、ゆっくりやっていこう」
「りょ〜かい!」
渚も一通り経験できたな、株式投資も確定申告も。IR情報(企業が出す投資家向けの情報)を見て、ある程度売り買いの判断も自分でできる様になったみたいだし。
女子高生でここまで出来るというのはなかなか珍しいと思う。
これからの成長も楽しみだ。
3月14日、ホワイトデー。
2月のバレンタインには、彼女の4人からと、杏奈、由依ちゃん、妹からもチョコをもらえた。
7個ももらうと消費するのがなかなか大変だ。貰えないより嬉しいけどな。
今日は8人全員で街に買い物にきている。ホワイトデーのお返しをしないといけない。
「今日はホワイトデーのお返しに、みんなの欲しいものなんでも買っちゃうからね!」
「ほどほどにねー!」
「ん?今なんでもって?」
「やったー!聖奈、洋服ほしー!」
「お兄さんありがとう!いっぱい買ってもらおーっと」
「いいの?ありがとう」
「私たちまで悪いなー、でもありがとう!」
「さっすがお兄ちゃん!太っ腹〜!マンションほしー!」
三者三様どころか七者七様の返事が帰ってくる。賑やかだな〜、一緒にいるだけで楽しい。
いっぱいどころか1人100万でも200万でもいいぞ?
流石にマンションはちょっときついが。
そうだ、大学の近くにマンション・・・いや一軒家が欲しいな。みんなで住めるようなでかいやつ。
できれば大学入学前までに準備したい。シェアハウスという体でなんとかならないかな。
高校生って不動産買えるのかな?父親に頼んでみるか?
どうせなら土地買って、一から建てたい。プールとかも欲しいなあ。
まあ、入試に落ちたら元も子もないけど・・・。
「ほら、おいてくよ〜?」
「あ、渚ごめんごめん」
いかん考え事してたらおいていかれそうだ。
あとで考えておこう。
「杏奈これ欲しいの?」
みんなそれぞれ好きなところに別れる中、杏奈はショーウィンドウの前でバッグを見ていた。
「あ、いやこれはさすがに」
「ちょっと近くで見せてもらおっか!」
「でもここ高いし、大丈夫」
「いいからいいから、見るだけ!」
「すみません!これ見せてもらってもいいですか?」
店員さんを呼び、バッグを持ってきてもらう。
昔と違い身長も高くなり、侮られることも少なくなった。
杏奈が大人っぽいということもあるかもしれない。
「わ〜かわいい!」
「気に入った?」
「うん、でも大丈夫だよ」
そう言いながらも目線はずっとバッグを見ている。
付き合ってもいないのに、強引に買っても引かれるかもしれないけど・・・まあ俺が買ってあげたいだけの自己満足だ。安いしこれくらいいいだろう。
「じゃあ、これお願いします!支払いはこのカードで」
店員さんに会計を頼んで購入する。
「ちょ、ちょっと!」
「杏奈に持ってて欲しいな。大人っぽいから、これくらいの物持ってた方が似合うし。それに俺が杏奈にプレゼントしたいだけだから、俺を助けると思って、ね!お願い!」
「ん〜〜、じゃあわかった。これだけだよ?」
「うん!ありがとう!」
「こちらこそ、ありがとう!大事にする!」
嬉しそうに微笑む杏奈はすごく綺麗だ。
自分の物にしたい・・・というのは言い方が悪いか。
でもこの笑顔は自分だけに向けて欲しい。
独占欲が沸々と湧き上がってくる。
「あー!杏奈ずる〜い!私にもなんか買って〜!」
渚がこちらを見つけて店の中に入ってきた。
やっぱり目敏いやつだ。
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UIG→A○G
タウングループ→シテ⚪︎グループ
ネットフレックス→ネットフリック○
ディー・エヌ・ベー→ディー・○ヌ・エー
りんご→アップ○
2O2O→ZOZ○
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