第6話 謎の男

いつものように斗真が仕事のため家から出て行った。

ゆうこは辛そうな表情をした母親の事が心配で

自宅へ行くも やはり不在であったため

その足で優子が入院する病院へ行ってみる事にした。


病院の入り口でちょうど母親と出会った。

「いつもありがとう、お母さん。毎日来なくても大丈夫だよ

たまには家でゆっくり休んで!」

今まで何かつけては母親と口論になり

お互いが口をきかない日もあったが、話したいのに

話せない不自由さに ゆうこは歯がゆさを感じていた。

そして 母親の愛情に触れ 自然に涙が零れた。


母親は帰宅してしまったが、せっかく病院まで来たので

とりあえず自分の身体が眠るICUに向かう事にしたゆうこ。

だが、今まで眠っていたICUに優子の姿はない。

「え、私 死んじゃった?」

慌てたゆうこは 自分の身体を必に探した。


それから30分余り・・・。

1階から病院内を順番に探し回ったゆうこは

最上階の6階でようやく自分の名札が貼られた病室を

発見し中に入った。


ゆうこは扉をすり抜け4人部屋の右奥のベッドに進むと

穏やかに寝ている優子を発見した。

どうやら絶対安静状態から回復し ICUから

一般病棟に移されていたみたいだ。

「あれ、誰か座ってる。」

優子が寝るベッドの横で一人の男性が座り

手を握り 顔を見つめている。

「私好みのイケメン、誰?誰?」

男は優子に話しかけていた。

「優子、今日は休みなんだ。良かったね、外傷はひどくないって

早く目が覚めるといいね。」

優子は頭に包帯を巻いていたが、顔などには特に目立った傷もなく

本当にただ寝ているだけのようだ。

「じゃあ また来るね。」

男は優子にそう告げると病室を後にした。

「しまった、ついて行けば良かったな。」

しばらくして病院を出たゆうこはふと思ったが、

今日のところは諦め 家に帰宅したのだった。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る