迷図

作者 石濱ウミ

7

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★★★ Excellent!!!

本作は幼少期に兄を神隠しによって失った主人公が、似た境遇の行方不明者を探すNPO法人と出会うことから始まる物語です。
そこで語られた平行世界の存在に、当初は半信半疑の主人公でしたが、突き付けられた証拠や証言により、自身の兄もまた異なる世界で生きているのではと思うのでした。

やがて、事務所に舞い込んだ女子児童の捜索依頼により、彼は別世界に足を踏み入れることになります。
果たして、無事に女児を保護できるのか、そしていつか兄を見つけ出すことが出来るのか、同じく平行世界に因果を持つ職員たちとともに、彼の世界を探求する旅が幕を開けます。

★★★ Excellent!!!

迷宮やダンジョンと呼ばれるものを、この世界の一部として、建造物や遺跡のような感覚でとらえているようなところがある。また異世界、異界などと言うと、全く別個の場が存在し、そこに繰り広げられている世界が独立して存在するかのようである。でももし、「この世界」がいくつも重なり合った姿だったら……?

多くの人がそのことを認識していなかったり、垣間見ても気のせいだと見なかったことにしたり。ドッペルゲンガーや神隠しなど、人が現われたり消えたりする話も、火がなければ煙は立たない、と言ってもいいかもしれない。この作品はそんな風に、世界の構造について思索を巡らせる「場」としての『メイズ』でした。

世界の綻びを見つけ出し、アリアドネの糸を頼りに、恐るおそる、なくしたものを探しに行く。もちろん、還ってくることを前提に。

作中には「重なり合う世界」の可能性を示唆する表現にも、心理描写を引き立てる表現にも、巧みな対比やキーワードが散りばめられ、創意工夫が凝らされていて非常に面白いです。

是非じっくりと鍵を拾い集め、扉を開けて、世界の繋がりを体感してみてください。