絶叫
4年ほど前。私は「ツイキャス」にハマっていた。「ツイキャス」とは、パソコンやスマホを使ってライブ配信ができるアプリのこと。リスナーたちとリアルタイムでコミュニケーションがとれ、SNSだけでつながっている顔の知らない人たちと話すのが楽しみだった。
ツイキャスでは、複数名が同時にライブを行い、コラボレーションすることもできる。私は、同じくライブ配信をしている人たちとお酒を飲みながら、毎晩のようにコラボしていた。
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その日は私を含めて4人でコラボしていた。みんなお酒を飲み、好き勝手に喋るだけのライプ。私以外の人は画面を映さず音声のみの参加で、そんな様子を十数名のリスナーが視聴。私はスマホを使って配信していた。
コラボしていたうちの一人に、『パラダさん』という人がいた。20代の男性で、この日は少し高級なワインを飲んでいたそうだ。
21時ごろからコラボを始めて、4時間ほど経った頃。数分間パラダさんの声が聞こえなくなった。しかし私たちはかなりお酒が回っていたため気づいていない。リスナーからチャット欄に「パラダさんの声がしない」という書き込みをもらい、ようやく異変に気づいた。
最初は通信状況が悪くなり、パラダさんの声が聞こえなくなっているのだと思った。ツイキャスではよく発生する不具合だ。こちらからも「パラダさん聞こえてますか?」と話しかけてみたが、返事はない。パラダさんからのチャット欄への書き込みもない。
トイレに行っているのかもしれない。そう思った矢先だった。
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ』
男性の叫び声がスマホから鳴り響いた。『絶叫』と呼ぶのがふさわしい声。まるでビルの屋上から人が落下したかのよう。声の感じからして、パラダさんのものだった。
私たち三人は「えっ!?今の何?パラダさん?」などと動揺。突然の絶叫に恐怖を感じた。パラダさんの画面はオフになっているので、何が起きているのかはわからない。
事故が起きた可能性もある。心配になり、私は「パラダさん、大丈夫ですか?」と話しかけてみた。
『大丈夫ですよ。どうしました?』
何事もなかったかのようにパラダさんが返事をした。間違いなくパラダさんの声だった。
「いや、叫び声がしたんで、どうしたのかなって思って。」
『叫び声?してないですよ、そんなの。それより、そろそろ眠くなってきたので抜けますね。ありがとうございました。』
そう言うと、パラダさんはオフラインになった。
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パラダさんは否定していたが、確実にパラダさんの叫び声だったと思う。私を含めた他の三人は会話していたため、声を上げることはできない。パラダさんが絶叫した以外、考えられないのだ。
この一件以来、パラダさんとは連絡が取れなくなってしまったため、あの時何があったのか確認することはできていない。
※ご本人や関係者に配慮し、一部内容を変更しています。
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