第156話


 まもなく今日の日程が終了する。襲撃は無かったが、烏川もここへは来なかった。


「(無事だと良いんだが……)」


 漸く解放され、体育館から外へ出ようとしたところで、妙な気配を感じる。


「(なんだ……?)」


 この生臭い匂いは。隣の燕翔寺もそれに気づいた様で、顔を顰める。


 目の前の空間が微妙に歪む。


「まさか、うっ」


 腹部に強い衝撃が。


「(しまっ、た……)」


 何やら液体の様なモノをかけられ、担がれる。


「桐堂様……?桐堂様っ!?」


 燕翔寺は僕を探してあたりを見渡す。まさか、この液体が………


「(成る程、な……)」


 謎に一歩近づいた。しかし、僕の意識はもう既に闇に沈んでいた。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





 体育館に辿り着くと、そこにらオロオロしながらあたりを見渡す少女が。燕翔寺だ。


「あっ、お姉様……!桐堂さまが……!」

「遅かったか……!」


 他の雑魚共は、この学園を囲む同僚達によって続々と確保の報告が挙がっている。が、恐らくそいつらは全て陽動。


「チッ」


 思わず舌打ちする。音波による追跡は可能ではあるが、すでに学生たちは解放されてしまった。


 あとはあの液体の匂いを追うしか……


「(いや、そうだ)」


 液体、そして目の前の少女を見てひらめく。まだまだ頼りないけど、可愛い妹分。


「ついてきなさい、智恵。貴女の出番よ」

「わたくしの、出番……はいっ!」


 燕翔寺の蒼炎は発火能力の中でも特段に火力が高い。直撃しなくてもあの液体を蒸発させるには十分。


「私の合図で能力を。別に当たる必要はないわ、適当にぶっ放しなさい」

「了解でございます……!」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る