第154話


「さぁ、私と踊りましょう?」


 大剣で薙ぎ払い、無数の床のタイルが舞い上がる。


「なんて出鱈目な……!」

「腰が入ってないんじゃないかしら?」

「チィッ……!」


 奴はサーベルで防御をする。だが


「そんなオモチャでこの剣が防げるとでも?」


 まるで先ほどとは正反対。重量と遠心力、さらに剣の腐食によりエレミュートで形成されたサーベルは呆気なく真っ二つに。


「サセマセンヨォ!」


 鎖先端が飛来する。


 体勢が崩れた男を蹴り飛ばし、クナイで鎖を弾きながら回避。


「やっぱり、1対2は面倒ね」

「おおおおっ!」


 再び形成されたサーベルをそのままクナイで防ぎ、大剣を叩きつける。


「クソッ、迂闊に近づけない……」

「近づかなくても結構よ?」

「何!?」


 大剣を槍に変形させ、投擲する。反応が遅れた男は直撃を免れず、そのまま廊下の端まで弾き飛ばされる。


 ただ追撃を許してくれる程相手もポンコツでは無い。


「テンション高いトコ申し訳ナイデスネー」

「チッ」


 足にまたあの鎖が絡み付いている。破壊しようと大剣で振り下ろそうとした瞬間から、私の体は浮き上がり、天井に叩きつけられる。


 そのまま床へ、天井へ、壁へ。


「舐めるな……!」


 振り回されながらも女にクナイを投擲する。投擲された3本のクナイはそれぞれ女の足元に突き刺さる。


「残念デスネー、どこ狙ってるンデスカー?」

「マヌケが」


 煽りに対して嘲笑する。残念ながらそれにはちょっとした細工がしてある。


 直後、クナイ達は青黒く変色し膨張する。


「What!?」

「アハッ」


 爆発が起き、鎖が消失する。


 しかし、まだエレミュートは四散していない。2人ともまだ生きている。


 やはり、手強い。


「(ちょっとこれ、無理があるわね)」


 残念なことに、私はメラノの様な魔法じみた力や燕翔寺の様な全てを焼き尽くす火力を持っているわけでは無い。


 その上テレサには通用したこの毒が効かないとなると殆ど勝機は無いに等しい。


「(まあ、それはさっきまでみたいに私の手元に小夜時雨が無い且つ)」


 ヒュンッ


「ガハッ!?」


 神速の正拳突きが男の腹部を正確に捉える。


「1対多に限るけれど」


 

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