第119話
「僕が前衛を務める。燕翔寺は援護を頼む!」
「は、はい……!」
普段ならジリジリ慎重に距離を詰めるが、今回はチーム戦。前衛の僕へのヘイトを稼ぐため正面から烏川に突っ込む。
「おおおっ!」
しかし
「なっ!?」
なんと、あろう事かロッカを素手でいなされた。そして……
「ガハッ!?」
視点が真っ逆さまになり、背中には強烈な衝撃が。
「(投げられた、か)」
烏川の靴裏が目に映る。そこには鋭利な刃物が。
だが
「燕翔寺っ!」
「はいっ!」
燕翔寺の炎が烏川に向かって放出される。しかし烏川は避けずに語りかける。
「ねえ、燕翔寺」
「?」
「こういう時、能力は使わない方が良いわよ」
「え……」
襟を掴まれ、立たされる。
「っ!?」
まさか、僕を囮に。
「桐堂様っ!?」
しかし炎は僕に直撃する前に烏川の前方に薄く張られた黒い膜に阻まれ、消失する。
「本来ならこれで桐堂は戦闘不納になったわけだけど、どうする?燕翔寺」
「っ……」
俯く燕翔寺。戦意を喪失してしまったのかと思ったその時。
「まだですっ!」
顔を上げ、目つきを変え烏川を見据える。
「参ります、烏川様」
その声と共に燕翔寺は地面を蹴り、烏川に接近する。しかしそのまま真っ直ぐに突っ込むのではなく、直前で姿を消す。
上だ。
「良いスピードね」
烏川が頭を傾けると、燕翔寺のレッセンが通り過ぎる。
「まだまだ、これからでございます」
そこからの怒涛の連続攻撃。
首、脇腹、腹部。どれもギリギリで避けられているがそのすべてが急所を狙った素早く、鋭い斬撃。
「……成る程ね」
合点がいったと烏川は燕翔寺の攻撃を全て回避してみせながら、頷く。
「っ!」
燕翔寺の勢いは止まらない。何なんだ、この動きは。いくらなんでも速すぎる。
「もう良いわよ、燕翔寺。疲れたでしょ」
「は、はい……」
力が抜けた様に燕翔寺はその場で息を吐く。
「燕翔寺、明日は私と組んでみましょ。今度は貴女が前衛として」
「わたくしが、前衛」
「そ」
燕翔寺の能力を活かすためには後衛に置いておいておくべきだと誰もが思うだろう。実際に僕もそう判断した。しかし、どうやら烏川は違う様だ。
「それで分かるはずよ。前衛、後衛、貴女にどちらの適正があるか」
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