第93話
烏川に祖母の話をしているうちに涙を流したりとみっともない姿を見せながら完食したわけだが、味はかなり良かった。それがまた僕を泣かせようとする。
堪えながら箸を置く。
「美味しかった。ありがとう」
「こちらこそ、良い話聞かせてもらったわ。ちなみに食べ終わったら"ご馳走様"っていうように」
「あ、ああ」
やはり最後にもこう言った儀式のようなものがあるらしい。言われた通り、また手を合わせて
「ご馳走様」
「お粗末様でした」
そう言って食器をキッチンに運ぶ。
「そういえば、よく肉なんか手に入れられたな」
「ちょっと無理言って譲ってもらったのよ。私な給料3ヶ月分の肉、ありがたく思いなさいよ」
聞けばこの一週間の僕の夕食は全て肉料理になるらしい。
「そんな大金を……」
「私がここまでしてるんだからサボったり不衛生な生活し始めたら承知しないわよ」
「き、気をつける」
やはり「やるからには全力で」らしい。
「ん?」
そういえば作るだけ作って烏川は終始僕を眺めているだけだった。
「烏川、お前の夕飯は?」
「私は良いの。栄養を外から摂取する必要は無いから」
そう言って烏川は盆や食器を持って僕の部屋から立ち去ってしまう。
僕たちと違って感情を表に出さない彼女の表情は読みづらく、けれど何処か悲しげな。
「(僕は烏川の事、まだ何も知らないんだな・・)」
今更そんな事を再認識するのだった。
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