第84話

 一旦朝の鍛錬が終了し、再び部屋に戻って汗を流してから教室へ向かう。

 その途中で1人の男子生徒と出くわす。


「よっ、桐堂」

「ああ」


 僕のクラスメイトであり、まだまだ数少ない友人の一人、安良川だ。


「どうした、朝から疲れた顔して」

「あー、いや。ちょっと自主練が捗ってな」


 安良川は良い友人ではあるが何かにつけて恋愛話に持っていこうとする悪いクセがある。


「(馬鹿正直に話したらそれでこそネタにされる)」


「そっちはどうだ?最近調子は」

「俺ぇ?」


 適当に誤魔化し話を変える。それに、安良川からも何かヒントが得られるかも知れない。


「まぁまぁだなぁ。一応、安定して群れの駆竜は全滅出来るようにはなったが」

「成る程・・・」


 なら僕より戦えているのか。


「ちなみに何のハウンドを使ってるんだ?」

「別に特別なもんは持ってねぇぞ?学園支給のロッカとソウレンと、シオンと。あとは・・・」

「多いな」


 僕のように2種類のハウンドを使うのは少なく無いが3つ以上のハウンドを一人で使う者は中々見ない。


「だってさぁ、選べねぇんだよ。それに全載せってなんかカッコよくね?」

「カッコいいかは知らないが・・・」


 それで駆竜の群れを相手して有利に立ち回れているのは事実なのだろう。


 一体を斬りながら他のもう一体を撃つ。全く違う二つの行動を的確に判断し、実行する。


「成る程な。ありがとう、少し参考になった」

「おう。何の役に立ったか知らんけど、どういたしまして」


 そんなこんな話していると自分達の教室が見えて来た。


「(よし)」


 まだまだ僕はこれからだ。絶対に強くなってみせる。


「そういやさぁ、桐堂」

「ん?なんだ?」

「イメチェンした最近の烏川さん、可愛くね?」

「・・・・」


 先程まで少し感心していたが、それは一瞬にして消え去る。


 安良川は安良川だった。


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