第83話
「まさか・・・素振り程度でこの様とは・・・」
力尽きて仰向けに寝転がると、頬をペチペチと叩かれる。
「しっかりしなさいよ。仮にも女子の目の前でしょう?」
「自分で仮とか言っちゃうのか」
正確には直前のランニングも含めてだが、朝からとてつもない疲労感を感じる。
つくづく僕は基礎的な身体能力が烏川だけでなく勝つべき相手、大江山と比べても圧倒的に欠けているようだ。
「まあ、伸び代があるって考えればいいんじゃないかしら」
「そ、そうだな」
手を差し出され、それを掴んで引き上げてもらい、立ち上がる。
「……ねぇ、桐堂」
「なんだ?」
「貴方はどうしてハンターを選んだの?」
烏川は虚空を見つめてそう問いかける。
「なにもこの世に存在する職業はハンターだけではない。他にも道はあるはず。なのに何故、貴方はその道を選んだの?どうして辛い役割を自分で担おうと」
「そう思ったの?」
そして再び僕に視線を向ける。何もかも飲み込んでしまいそうな、深い、深い、蒼の瞳で。
「(どうして、か)」
深く考えたこともなかった。が、スッと頭に浮かんだ言葉は自然と口から出ていた。
「憧れだ。人々を守るという仕事への」
カッコいいと思った。強大な敵に立ち向かう姿が、身を挺して人々を守る姿が。
そしていつか僕もそうなりたいと。そう思った。
「そう」
成る程ね、と頷く。そして
「力を手に入にしたとしても、どうかその心だけは忘れないで」
そう言って優しく微笑むのだった。
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