第62話


 昼休み。


 以前のように集まっての昼食は無くなってしまったらしく、全員それぞれ違う場所で昼食を取っている。


 雰囲気が重苦しい。騒がしいことで定評のある道尾もだ。桐堂に至ってはまず教室に姿が無い。


「その……悪ぃ、ちょっと良いか?」


 どうしたものか。と、カフェオレを飲みながら物思いに耽っているところを声をかけられる。


「安良川さん、だったかしら?」

「ああ」


 クラスメイトの1人である男子生徒だ。直接交流は無いけれど、最近桐堂と一緒に居るのをよく見かけるような気がする。


「少し、頼みたい事があってな」

「何?」


 そんな彼が私に何の用なのかしら。


「アイツを、桐堂を助けてやってくれねぇか?」


 助け、ね。


「貴方達って、そこまで仲良かったかしら?」


 敢えて鎌をかけてみる。すると少しバツの悪そうに頭をかく。


「確かに、知り合ってすぐ、だな……」


 どんな挙動も見逃さない様、じっくりと観察する。コイツが上部だけの偽善者か、それとも皮の厚いクソ野郎か。


「けど、だ。俺はアイツのこと友達と思ってる」


 一旦カフェオレを置く。


「それなら、貴方が助けてあげれば良いじゃ無いですか?」

「そうなんだが……」


 またバツの悪そうな顔になる。


「全然口聞いてくれなくてさ。それに、俺もその現場を目撃したわけじゃないから噂が嘘だって証明できなくて……」

「ふぅん……」


 まあ、教室の朝の光景は見ていたしそれくらいは知っている。彼が桐堂にとって唯一の同性の友人であることも。


「(ちょっと意地悪しすぎたかしらね)」


 私としても奴が近くにいる以上この状況は打開したい。


「(そうね……)」


 残りをグイッと飲み干し、息を吐く。


「分かったわ。承諾しましょう」

「ホントか!?」

「ただし」


 人差し指を安良川の顔に向け、黙らせる。


「貴方にも手伝ってもらいますよ」



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