第46話
「はああああっ!」
「・・・・」
気合いと共に剣を振り下ろす。勿論、殺傷力はない。
この剣は烏川から貸し出された特殊カーボン製のダミーソードだ。
朝の鍛錬は無かったが夕方の鍛錬はいつも通りやるとの事。
「脇が甘い」
「ぐぅっ!?」
しかし、振り下ろされた剣は命中する事なく受け流され、逆に返り討ちにあう。
「まだ、敵わないな・・・」
溜まった疲労と今の痛みで膝をつく。力の差が有りすぎる。
烏川に稽古をつけてもらうことになって二週間、未だに一撃も入れたことが無い。少しは上達してると思うのだが……
「こんな短期間で追いつかれる方が逆に困るわよ」
「それも、そうだな」
そこでふと疑問に思った事を口に出す。
「そういえば、烏川」
「何?」
「実は僕達より年上だったりしないか?」
「無いわよ。メラノじゃあるまいし」
つまり、僕らと同じ年齢でありながらここまで戦い慣れているという事。それは可笑しい話だ。
正式なライセンスが無ければ本物フォリンクリとの戦闘はできない。しかし、その正式なライセンスは少なくともこの学園の様な高等教育を受けた後でないと所得できない様になっている。
そして、メラノさんの存在。
対策部ならそんな制約は無いかも知らない。しかし、彼女は僕達と同じ学年に居るが、年齢は僕達より年上。
だと言うのに、まだ【候補生】だ。
「もう一つだけ、聞いて良いか?」
「何?」
「対策部になるのは結構難しいのか?」
「さっきから何が言いたいのか分からないけど、まあ難しいわね」
「そもそも桐堂、貴方の年齢ではなれないわ。今年ちょうどメラノが受験資格を所得したばかりだし」
「え、じゃあ烏k」
烏川はどうなんだ?僕のそのセリフを悟ったのか烏川は指を僕の口に押し当て、わずかに微笑む。
「ナイショ」
そう言って烏川は僕が落としたダミーソードを拾い、後片付けを始める。
僕は目の前の少女が何者か、益々分からなくなった。
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