2章 命がけの戦い

第25話 森の王国と呼ばれたリーリルス国

 俺様とナナニアと双子のラフォルとルンリンは馬車に揺られていた。

 

「ったく、トラックに乗ればあっという間にたどり着くというものに」

「あんたはバカですかぁあああ、あんな危険トラックでまた人を引いてみなさい、リーリルス国のエルフ族が襲い掛かってくるわよ」

「叩き伏せるのみだ」

「叩き伏せてたら交易も交渉も出来ないでしょうか」

「確かにそうだ。これは一本とられたな」


「レイガス師匠、それは誰もが気づく事かと思われますわ」


 ルンリンがぴくぴくしながた突っ込んでくれた。


「ナナニア師匠も落ち着いてください、これバナナだそうですよ」


 ラフォルはナナニアの手なずける方法を習得したようだ。


「わーいバナナー」


「そこまでバナナが好きなのかやはり雌ゴリラだな」


「もぐもぐ、あとで覚えておきなさい、キラン」


「ふ、あとが怖いな」


 逆に俺様がぴくぴくしていた。

 双子はありとあらゆる事を俺様とナナニアから学んでいった。

 ルンリンは商売に興味を示した。

 一方でラフォルは武術に興味を示した。


 まさか10歳の女の子を弟子にするとは思わなかった。 

 ルンリンの恐ろしい所は一度覚えた事は何がなんでも忘れないと言う所だ。

 体の身のこなしはどことなく殺戮者向きだ。

 本当に不思議だ。だから俺様はピエロとなった時にルンリンに身を守る術を教えようと思っている。


 それは心の声でピエロと相談した結果だ。


 一方で双子のラフォルはナナニアの強さを分析しているようだ。

 その瞳には何かが宿っているような不思議な感覚を感じた。


 今向かっている国は森の王国と呼ばれるリーリルス国だ。

 整備された街道を馬車が走る中、馬車の窓から見える景色は見渡す限りの森と言う森の中だ。


 街道には特殊な結界魔法が張られており、モンスターや動物が入ってこないようになっているようだ。

 ところどころに柱のようなものが立てられているからそれで分かった。


「そろそろ着きます」


 しばらくすると巨大な城が見えてきた。

 普通の城ではなくて無数の木々の城だった。

 大木そのものが骨組みとなっているようだ。


 燃やされたらやばくないのだろうか。


「旦那、今燃やされたらまずいって思いましたね?」

「ああ、誰だってそう思うだろう」


 俺様は御者に話し返した。


「あの大木は世界樹の木々からとられて建設されたものだ。世界樹の木々は燃えないんだよ、なぜか知らないけど、遥か昔からそう伝えられてきた。あの城の骨組みだって遥か昔からそのままだそうだぜ、俺達人間はこの国には嫌われてるから、俺はここで退散するよ」


「これはほんの気持ちだ」


「お、ありがとな」


 御者の男性は俺様達を下すと、即座に馬車を反転させて元来た道を戻っていった。

 俺様達の目の前に広がる大木の城門はまるで門番のように立ち尽くしていた。


 門は開かれる事なく、城門の上部から1人の女性が飛び降りてきた。

 普通なら落下して死ぬことが当たり前だ。

 しかし、その女性は両耳がとんがっており、エルフ族であった。


「きゃああああああ」


 最初に嬉しい悲鳴を上げたのはナナニアであった。


「エルフ族かわいいい」


「うせろゴリラ」


 エルフ族の女性が発言した。

 俺様とラフォルとルンリンの背筋に冷たいものが走った。

 ゆっくりとナナニアを見ると彼女の眉間に深い、とても深い皺が入っていた。


「あらまぁ、エルフ族にゴリラと呼ばれるなんてね、この勇者と魔王の末裔として、あなたを天罰ううううううう」


「お、おちつけ、おおおおお」


 圧倒的な力に俺様は投げ飛ばされ、城門に激突した。


「ゆ、勇者と、ま、魔王様の末裔、まさかあなたはナナニア殿ではないでしょうか」

「そうよゴリラのナナニアよ」


「これは失礼しました!」


「てか俺はどうなんのよ、鼻血でそうだよ、出ないけど」


「ではナナニア様こちらへ、そこのニワトリついてこい、それと双子達もだ」


「さぁ、ニワトリちゃん行きましょうね」


「ナナニア覚えてろよ」


 俺様は1人むなしく地面を殴っていた。

 ゆっくりと立ち上がると城門が閉じていく。


「ちょおおおおまてえええええ」


 挟まるギリギリで城門の向こう側にたどり着いた。

 エルフの城下町を見るのは人生で初めてだ。

 このリーリルス国のエルフ族達は部外者を嫌い、サーカス団で働いていた時も城門の外で芸を披露したものだ。


 無数の屋台が広がっている。

 本を売っている所もあれば、武器を売っている所もある。

 防具も売っている所もある。

 ほとんどが高価な値段がつけられているが。俺様のマネーで全て購入できるレベルであった。


 それとテネトス国の城は崩壊してその瓦礫をちゃっかり収穫していた。

 城の素材をテレフォンショッピングで売買した結果、今の俺様の持ち金は凄い事になっている。


「わたしはエルフ族の騎士団団長ネイストだ覚えておくように、女王陛下がナナニア殿の来訪を首を長くしてまっている。そこのニワトリはナナニア様のおかげで面会できるだろう、ありがたく思え」


「は、はい、すげーむかつくけど」


「今なんといった」


「すげーむねでーけな」


「やはりニワトリめ、ニワトリはエロいと相場はきまっておる、そうやって双子の子供をつくったのだろう」


「いえ、彼らは弟子ですが」


「嘘をこけ」


「ネイストちゃんそれは本当よ」


「な、なんと、ナナニア殿の弟子とはお前らは恵まれているなぁ」


「そもそもエルフ族ってナナニアと懇意があんのか」


 するとナナニアはこちらを見てほくそ笑む。


「3歳の頃に来た事がるのだよ」


「よく覚えてたな」


「父上と母上がエルフ族の女王と仲が良くてね、その子とすっかり忘れてたわ」


「こっちだニワトリ、そっちは着替え室だ。やはりエロだな」


「勝手にエロにすんなや」


 俺様はいたたまれない気持ちになりながら、頷いていた。

 それから沢山の木製の階段を上がった。

 迷路のような作りではないものの、城はとても高い所に位置するので、ひたすら階段を上った。


 俺様の右足は障害を持っているため上がるのはとても苦労した。


「ふ、ニワトリだから遅いのね」


「レイガス師匠はニワトリじゃないですし、遅いわけではないんです。右足が障害をもっているんです」


 ルンリンが俺様の前に立ち堂々と言い放った。


「これは失礼した。勇敢なる娘に従って、歩幅をゆっくりしようか」


「ああ、助かるよ」


 俺様達はようやく最後の階段を登り切った。

 途中からルンリンが発言してくれたおかげで、騎士団長のネイストもゆっくりと歩いてくれた。ナナニアだけマイペースで上がっていく、あいつ覚えてろよ、と心の中で思った。


 城門がゆっくりと開かれていく。

 俺様と双子達はわくわくしながら茶色の門を見ている。


「ナナニアちゅうわあああああああん」


「ばたん」


 なぜかナナニアが扉を止めた。


「そういえば、あなたの父上が着ておりますわ」


「それ先にいえええええええええ」


 ナナニアの絶望の悲鳴が轟いた。

 心の中でざまぁみろと思ったのは内緒だが。


「ナナニアちゅあわあああああん、なんで閉めるの、パパがきましたよおお」


「あれ本当に父親か?」


 ナナニアは首をぶんぶんと降っていた。

 あれが勇者の力と魔王の力をもっているのか。

 ある意味恐ろしいパパだな。


 

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