第18話 天使族

 今俺様の前には5人の古代の英雄の力を受け継いだ天使族がいる。

 今の俺様は人を斬り刻みたくて仕方がない。

 沢山沢山人間を殺したくて殺してくてたまらない。


 3人の天使族がこちらにゆっくりと歩いてくる。

 2人の天使族は勇者と魔王の末裔のナナニアのほうに歩いている。

 彼等の頭の上にはフライパンのような丸い輪っかが浮かんでいる。

 色はそれぞれ違うようだ。


 彼らの背中には白い翼が生えている。

 本当の天使のようであった。

 だが俺様は知っている。


「微笑んで、救済を与える奴こそ利子を払えと言ってくるものだ」


 一応俺様は殺人鬼だがレイガスの知恵もあるので、商売魂ながら語ってみた。


「ほう、お主は利益を得るにはそれなりの代償が必要だと思っているようだな、話の分かる奴はとても大好きだぞ、この英雄は英雄達を率いるリーダーのガンドンだ。先程無駄口をたたいたが、名乗っていなかったな」


 次の瞬間、ガンドンの周囲に魔法陣のようなものが展開した。

 ガンドンの周りに無数の武器が回転していて浮遊している。

 剣、斧、槍、杖、弓、ナイフ、棒、ありとあらゆる武器が浮いていた。


「我こそは英雄ガンドン、全ての武器を扱うものならりぃいいい」


 それに続いて隣の天使族の男性も名乗った。


「我こそは英雄レクルンザどんな敵も狙い撃つ」


「我こそは英雄マブどんな敵もこの拳と足で葬る」


「我こそは英雄ガジャモンテどんな敵も伝説の魔法で消滅させる大剣じゃなりぃいい」


「我こそは英雄サルサルどんな敵も指揮をして操り狂わす」



 全員が男性で、どうやら貴族社会は男性優位の思想が強そうだ。

 ラルガルシア王国ではそういう差別をなくすために男女平等を掲げている。


 こちらにはリーダーである、英雄ガンドンと英雄レクルンザと英雄マブがやってきている。

 

 一方でナナニアの方角には英雄ガジャモンテと英雄サルサルが向かっている。


 俺様の全身は殺人鬼としての機能を果たしてくれる。

 いつ、どうやって、どのようにして、終わらせるのか。

 それが殺人鬼のポリシーだ。


 なぜか俺様は毎回殺人ピエロになると、右足が動くようになる。

 レイガスの状態だとひきずったりして歩きにくいのだ。


「自由に動ける事がとても楽しい事だとはな、てめーらは殺人ピエロをなめすぎなんだよ」


 俺様は目の前に向かって走り出した。



「剣も道具もありません、さてどこから武器がでてくるでしょーか」


 相棒のピエロの仮面を身に着けた。

 心臓がトクンと脈打った。


「はい、武器はありません、ただの蹴りです」


 俺様の蹴りが英雄ガンドンの首を切った。

 いつもならそれで敵を葬る事が出来る。

 しかし英雄ガンドンの首元には無数の武器が浮遊していて、邪魔になっていた。


「ったくよーそれ卑怯じゃね、こちとら丸腰だよん」


「殺人ピエロ、情報は調べてある。体そのものが武器と、武器を使う時もあれば使わない時もあると、武器そのものがフェイクなのではと思ったのだ。お前は体そのものが武器だ」


「くーーっはっはっはははは、おめーいい線いってるぜ、ならこれなら」


「お前の相手が1人ではないという事を忘れる出ないぜい」


 そこに英雄レクルンザのブーメランが飛んできた。

 そのブーメランの数は数百いや、数千を超えていた。

 もはや避け斬る事は不可能。


 俺様は地面に足をついた。

 

【師匠、もし避ける事が出来なかったらどうすればいいですか】

【あ? んなもん全部受け止めればいいだろ】


 あの時の道化師としてピエロとして指導してくれた師匠がいた。

 彼は俺様にこう言ったのだ無限の攻撃でも無限の受け身を取れと。


「ああ、やってやるぜ、師匠」


 無数のブーメランはどんな敵も狙い撃つだけあり、全ての攻撃が頭、首、腹に吸い込まれるようにやってきた。


 動いて動いて動いて動きまくって、死に物狂いで体を回転させて、ブーメランを掴んで、また掴んで。

 呼吸1つさえ無駄には出来ず、少しの油断さえ出来ない。

 それは死を意味するから。

 ブーメランのスピードは馬車よりも早い。

 しかも刃物状になっているので、あんなのを受けたら、体がミンチ状態になるだろう。


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勇者と魔王の末裔ナナニア・ラッセル

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 ナナニアはその光景を見て、絶句していた。

 なぜならピエロ・トッド・ニーアスが数千を超えるブーメランの餌食になったからだ。


 ものすごい量のブーメランにナナニアはただただピエロの無事を祈るしかなかった。

 

 気づいたらそこにはブーメランの墓場のようにモニュメントみたいなものが立っていた。


 ナナニアはその先にピエロの死体があるのではと絶句していた。


 しかし、そこにはくつくつと笑いながら全身が血まみれになっている男がいた。


 彼は口から大量の血を吐き出しても、ただ叫んだのだ。


「殺しきれてねーぞ、ああ、師匠よ俺様には全てを受け止める事がなど出来ない。でもなぁ、死なない程度に受け止める事はできんだよ、ばーか」


「な、なんと、お、お前は化け物か」


「英雄レクルンザさんよおお、神の使いである天使族がどんな敵も狙いうつんじゃねーのか、ざーんねん、俺様には通用しませんでしたー次はこっちの番だぜええええ」


 ピエロが跳躍した後、次の瞬間には英雄レクルンザの首が綺麗に空を飛んでいた。


「お嬢さん、こちらの事をお忘れではございませんかな」


 そこには長い顎鬚をはやした老貴族がいた。

 彼は膝が悪いのか杖をつついている。

 

「勇者と魔王の魔法とやらを放ってみませんかな」


「言われてなくてもそうするわよ」


 勇者と魔王の末裔であるナナニアは圧倒的な剣術と武術を獲得している。

 そして天才的で賢者をも超えると言われる魔法をも熟知しているのだ。


 右手に炎の魔法を展開させる。

 もう手加減なんてしてられないという事で、魔法陣をいくつにも発動させる。

 炎がさらに炎と合体し、さらに炎と融合する。

 そこに小さなスパイスのように氷魔法を展開させると。

 それを英湯ガジャモンテにぶん投げた。


 ガジャモンテはにかりと笑ると、右手と左手に光魔法を発動させた。

 彼はナナニアが行った魔法術式と発動方法をまねた。

 その結果。同じ力となり、光魔法に小さなスパイスとして闇魔法を展開させる。


「あなたの術式を学ばせてもらいました」


「ふん、天使族だけにせこいわね」


「それでも勝ちたいのです。勇者と魔王の末裔に」


 凝縮された炎の魔法が氷によって爆発する。

 凝縮された光の魔法が闇によって爆発する。

 

 辺りを支配したのは水蒸気であった。

 その水蒸気はテネトス国全体を覆い始めた。


「魔法天界発動、連射モード、撃って撃って撃ちまくれええええ」

「無限炸裂光魔法発動、弾いて弾いて弾きまくれえええ」


「この、しつけーわね、なら天地雷雨降臨せよ、その雷撃は敵を捕らえるものなりい」

「ふ、自然現象乖離シールド魔法発動、全ての攻撃を防ぎなさい」


「地よ水を吸い上げ、巨躯のゴーレムとなり、その拳を打ち落とせ」

「無限の風よゴーレムの拳を打ち砕け」


 そんな感じで2人は魔法を炸裂させまくった。

 いつしか自分たちの魔法でこのテネトス国が崩壊したらまずいと思って、ナナニアはシールドフィールド魔法を発動させたいた。


 これは辺りにバリアを張って魔法の力が発動する場所を限らせるというものであった。


「はぁはぁ、あんたやるわね」

「ふぅふぅ、勇者と魔王の末裔には勝てんようだな」


「なぜ」

「力がなくなった。もう体をとりとめられないのだろう」


「あ、あんた勇者と魔王の末裔だから言うけど、十分凄いわ」

「ふ、お褒めいただきありがとう」


 目の前の英雄ガジャモンテは粉々の粉になって消滅してしまったのであった。


 その後ろ、つまりバリアの外側で、1人演奏をしている謎の男がいる。

 彼も天使族で貴族なのだろう、高そうな衣服を着用している。

 指揮者が使う指揮棒を使って1人で演奏している。

 そこには音楽はないのだが。


「どうやらレクイエムは終わったようですね、次は英雄サルサルの演奏会を始めようではないか」


「奇遇ね、そろそろ体を動かしたかったの」


 ナナニアはにかりと笑った。

 次の瞬間、大きな何かと何かが高速でぶつかる衝撃を感じた。

 それはピエロ・トッド・ニーアスと英雄マブとの格闘バトルの開始の合図だ。

 

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